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 どうせ堀江は政治には無関心だろうと思っていた。そもそも堀江はこの年の3月に出したばかりの『僕は死なない』という本の中で「ちょっと頭のいい人は、やっぱり政治家なんか、やりたくないでしょう。損だから。面倒くさいし。少なくとも僕は絶対やらない」とまで書いている。

 ところが、堀江は意外にも熱っぽい口調でこう返してきた。

「そもそもお金は天下の回りものだろ。こんなの絶対に民営化すべきだよ。小泉さんにはぜひ勝ってほしいよね」

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 堀江は多くは語らなかったが、「痛みを伴う構造改革」を掲げ、「自民党をぶっ壊す」と言って空前の人気を誇った小泉に肩入れしていることは、すぐに理解できた。

 それから少したった8月初め。堀江とともにCM撮影の現場に向かう車中でラジオのアナウンサーが、小泉がいわゆる「郵政解散」を強行する考えであることを報じていた。すると、堀江は突然、同乗する園田につぶやいた。

「俺、選挙に出たい」

 何となく予感していたという園田は、あっさりと返した。

「出ればいいじゃないですか。だったら僕もお手伝いしますよ」

 なにごともないような口調だったが、園田はこの時の約束を守った。堀江が出馬を表明するとライブドアを休職して、選対本部長として堀江を支援することにしたからだ。

「社長退任」の条件を突き付けられて無所属での出馬に

 堀江の政界進出はすぐに実現に向けて動き始めた。

©文藝春秋

 8月15日夜10時ごろ、2人の大物議員が人目を忍んで六本木ヒルズにやってきた。 自民党幹事長の武部勤と、総務局長の二階俊博だ。二階は変装のつもりか阪神タイガースの野球帽をかぶっている。

「君は政治家になりたいのか」と、武部がストレートに聞いた。武部の息子は堀江の友人で、出馬の意向は伝わっていた。

「良い機会があればと考えていました」

 堀江が前向きな思いを伝えると、武部は自民党公認による出馬を打診した。

「まあ、でも政治家は大変だよ」

 会談は1時間半にも及び、武部と二階がヒルズを後にした頃には、日付が変わる直前になっていた。この堀江の出馬情報はすぐに報道陣の知るところとなった。翌日午前中、記者に囲まれた堀江は自民党から出馬を打診されたことをあっさりと認めたが、今度は民主党代表の岡田克也にも会いに行った。

 結局、岡田とは全く意見がかみ合わず、堀江は自民党から出馬する意向を固めた。だが、ここで一悶着があった。