2004年に最高裁が“性加害”と認めたにもかかわらず、ジャニー喜多川氏の問題はなぜ「令和の今」に騒動になったのか? その理由を、脳科学者の中野信子氏とデーブ・スペクター氏の対談を掲載した新刊『ニッポンの闇』(新潮社)より一部抜粋してお届けする。(全2回の2回目/前編を読む)
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「ネット裁判所」の威力
中野信子(以下、中野) 2004年当時は騒がれなかったのに、今回は大騒動になったのは日本のそういうコンプライアンスに対する意識が変わったからだと思います? それともBBCが放送したドキュメンタリー『J-POPの捕食者:秘められたスキャンダル』でなにか新しい事実が報じられたからとかなんですかね?
デーブ・スペクター(以下、デーブ) BBCの番組の影響は大きかったけど、とりわけ新しいことは出てないですよね。むしろ大きかったのはYouTubeで元ジャニーズJrのカウアン・オカモトが告白したことだったり、ネットの「世論」だったかもね。
ホリエモン(堀江貴文)、ひろゆき(西村博之)、成田悠輔の3人も大きかったんじゃないかな。ジャニーズ事務所の姿勢を強く批判したから。「ジャニーズ帝国」はテレビや新聞、出版も含む各メディアに強い影響力を持っていて、世論を誘導していた面があるけれど、さすがのジャニーズも“ネット裁判所”まではコントロールできなかった。そこが大きいんじゃないですかね。
中野 デーブさんもものすごい数、記事出てましたもんね。
デーブ 取材いっぱい来た。
中野 ネット記事やSNSの影響力の大きさって海外も同じですよね。#MeToo運動もそうだったじゃないですか。あれはニューヨーク・タイムズによるハリウッドの大物プロデューサー、ハーヴェイ・ワインスタインの性暴力、セクハラ疑惑報道がきっかけで始まりましたけど、ツイッター(現・X)のハッシュタグが猛威を揮った。ワインスタインの件だけに留まらず、女性に対する男性のレイプやセクハラが多数告発されて。
デーブ ちょうどジャニーズ問題の頃、イギリスやアメリカでは人気コメディアンのラッセル・ブランドの性的暴行疑惑が浮上して、大問題になってたんですけどね。
中野 ケイティ・ペリーの元夫。