デーブ そう。ジャニーズ問題ではジャニー喜多川がもう亡くなってるから、彼自身の刑事責任も民事責任も問えないけど、ブランドはロンドン警視庁が捜査しているんですよね。ここでも「ネット裁判所」の影響がとても大きい。本来まだ捜査段階だし、そういう意味では「推定無罪」なんだけど、ブランドは徹底的に叩かれてる。
ジャニーズと忖度
中野 デーブさんにもうひとつ聞きたいことは、こういう問題が起きた日本の芸能界とかメディアの構造ですよね。日米の違いとか。
デーブ 日本の芸能界はタレントより事務所が力を持ってますからねえ。ジャニーズ事務所に所属していれば仕事ができて、芸能界で成功できる。そういう力関係ですよね。
つまり、タレントよりジャニーのほうが強いから止められなかった。この問題には未成年に対する性虐待という側面と同時に、芸能界のパワハラ、セクハラという面があるわけですよね。
中野 これがこと「未成年」って問題に限らなければ……。
デーブ テレビでも映画でも音楽でもどこの業界でもありうる話で、広告代理店だろうが出版社だろうが上場企業でも中小企業でも、言ってしまえば男でも女でもありうることで、さらに言えば世界中どこでもある話でしょう?
中野 権力と性がある限り。
デーブ そう、だからといって許されてはならないし、この問題がこれ以上広がらないようにヒヤヒヤしてる人も実はけっこういるんじゃないかと思ったりするんだけど。
中野 「アメリカのシステムを参考にすべき」って言う人もいますよね。
デーブ それは絶対に無理でしょ。まず、アメリカではドラマでもバラエティでも、よっぽどでない限り必ずオーディションで出演者が選ばれるんですよね。公平公正な選出が保証されてて、キャスティング担当は監督やプロデューサーの意向しか考慮しない。監督やプロデューサーに権限が集中する面はあるけど、日本のテレビ局みたいに「大手芸能事務所への忖度」なんかない。
中野 そうか。タレントがエージェントより強いわけだから。
デーブ 仕事ごとにその人の領域がちゃんと決まってて、キャスティングする人もほとんどThe Casting Society of Americaって組合に入ってるし、プロとして誇りを持ってる。映画のクレジットでキャスティング・ディレクターの名前の後にCSAってあるでしょ? あれですよ。
中野 不祥事起こしたら、組合にいられなくなって仕事もなくなると。
デーブ 日本みたいに、ジャニーズ事務所に文句言ったらタレントが出演してくれなくなるとかそういう心配をする必要がない。
中野 だから「ジャニーズ問題」をワイドショーなどが長年、取り上げられなかったわけですもんね。
デーブ メディア各社に「ジャニ担」と呼ばれるジャニーズ事務所の窓口担当がいて、そこを通してしか交渉ができない仕組みになってたから、社内のどこの部署でも勝手に報じたりしたら「タレントを引き上げる」ってことになる。それが怖いから報じられない。