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「密売に関わったら逮捕すると伝えていた」X取締官の“裏切り”

 カルロスの公判は、逮捕から3カ月後の2015年7月に始まった。

 公判で弁護側は、カルロスとX取締官の通話記録などの証拠開示を求めた。一方、検察側は開示を渋り続けた。しかし証人尋問の直前に「記録が見つかった」ことで裁判は紛糾し、半年以上、進行が遅れることとなった。

 この記録の存在によってカルロスがエスだったと証明されたことになり、法廷は一気に厳戒態勢に。防弾チョッキ着用の上、公判に臨むことになった。

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 公判のハイライトとなったのは、X取締官の証人尋問だ。「良心に従って真実を述べ、何事も隠さず偽りを述べないことを誓います」。そう宣誓したX取締官。カルロスから情報を得ていたことは認めたものの、密売をしていたとは知らなかったと主張し、以下のような発言を繰り返した。

「(薬物所持が判明したら)捜査対象にしていたはずだ」

「カルロスの情報は確度が低かった」

「密売に関わったら逮捕すると伝えていた」

「我々に協力したいという気持ちで情報提供してくれていたと思っていた」

 さらに、カルロスから薬物の粉末を提供されたことについては「何か全く分からなかったです。見た目で指定薬物と分かることはありませんし」としらを切った。弁護側から証拠開示を求められていたX取締官の「捜査日誌」の開示が遅れたことについては「うっかり見落としたからです」と言ってのけた。

写真はイメージ ©Paylessimages/イメージマート

語るに落ちるX取締官

 カルロスは忌々しそうに振り返る。「法廷で証言を聞きながら、怒りで飛びかかろうとする自分を抑えるのに必死でしたね」

 ただ、完全にしらを切り通せたわけではない。弁護人の市川耕士弁護士の追及に対し、以下のように本音を口にする場面もあった。

 市川「カルロスさんは、それまで散々、密売人の情報をあなたに提供してくれた人ですよね」

 X「……」

 市川「Xさん、19年も麻薬取締官やってるんですよね」

 X「はい」

 市川「そのような人物が出す薬物が、本当に違法なものじゃないと思ってたんですか?」

 X「まあ、正直に言えば指定薬物である可能性はないとは言い切れないと思ってましたが……(以下略)」