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懲役8年6カ月、罰金300万円の大幅な減刑となった理由

 2017年4月、大阪地裁はカルロスに対し、懲役8年6カ月、罰金300万円の有罪判決を言い渡した。求刑は懲役13年で、大幅な減刑と言えた。これについて、村越一浩裁判長は次のように理由を述べている。

「(X取締官とカルロスは)『持ちつ持たれつ』の関係にあった。X取締官の対応が、被告人による違法取引を促進、助長した面があることは否定できず、捜査機関の一翼を担う麻薬取締官の行動が、被告人の意思決定に不当な影響を与えている」

 カルロスは名古屋刑務所に収監された。その間、偽証罪などでX取締官を告発したが、不起訴になった。

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独房で孤独な日々を過ごし、服役中に高齢の母親が死亡

 刑務所で最初に任されたのが、官本(貸与本)などの管理をする「図書工場」だった。エスとしての経歴を重く見て、刑務所側から配慮されたのではないかとカルロスはいぶかしんだ。

「俺みたいな不良の、麻薬組織の人間が行けるようなとこじゃないんです。大学の工学部出て爆弾作ってた奴とかさ、コンピューターいじってた奴とか、そんなエリートっぽい人間が行くとこで」

 ずっと独房で、ひたすら孤独な毎日だった。服役中に高齢の母親が亡くなり、天涯孤独の身となった。それでも知人が身元引受人となり、昨年末に仮釈放を受けられた。職員からは「今回、ご苦労様でしたね」と、これまでの服役で一度も言われたことがないような言葉をかけられたのが、印象に残ったという。

 仮釈放時にはすでに還暦を経て、62歳となっていた。出所後は、警察署に巡回を依頼し、身辺に警戒しながら静かに暮らしている。「そりゃそうですよ、俺がもし潰された組織の人間なら許さないですから。こんなことしなきゃよかったなって思うんだけど、もうやっちゃったことだからね。この世界では、チンコロ(密告)が一番ダメなことだから。警察からは、夜は出歩かないでくれとか言われてますよ」

写真はイメージ ©アフロ

何度も刑務所暮らしを繰り返したことへの率直な思い

 何度も刑務所暮らしを繰り返した上、元エスとしての十字架も背負ったカルロス。自由の身となった今、何を思うのか。単刀直入に心境を尋ねた。

――人生の3分の1は、獄中にいるわけですよね。後悔はしてないんですか?

カルロス 全くないですよ。ロス・セタスの親方(幹部)が、最初に俺に言ってくれたような生活を送れましたしね。

 シャバにいる間は短かったけれど、毎晩飲みに行って、飲みに行けば何百万円も使って。今はできないけどね。俺はそんな利口でもないし、会社を起こしても大したことなかったし、もし麻薬を売ってなかったらこんな生活できたかなって、疑問が残りますよね。

 逆に、そういう風に思わないと、ちょっと納得できないんですよね。これでよかった、と。そう思わないとやってられない。