借金取りが家に来て「親父、いるか?」と…
――自分のことは自分でやっていた。
武田 小1からサッカーを始めるんだけど、遠征があったら前の日に自分で用意したり。サッカーチームでキャンプに行ったときも、いろんな手配とかもすべて自分でやりましたね。
勉強もちゃんとやってたし、宿題を忘れることなんて絶対になかったし、遅刻もしなかった。言われたこと、やらなきゃいけないことは絶対にやる子供で。さらに几帳面。だから、結婚できないんですけど(笑)。
――お父さんが借金していることは、子供ながらに把握していたのですか。
武田 小学4年生の頃かな。留守番してると、借金取りが「親父、いるか?」ってしょっちゅう来たりしてたから、どうしたってわかっちゃうよね。
「お漏らしをしたら、お風呂場に連れて行って…」寝たきりの祖母を介護
――大人でもイヤですが、小学生で借金取りの相手をするのって相当ですよね。
武田 取り立てといっても、ものすごく怖い人が来て、ドアをバンバン叩いたり、大声を出して脅すとかじゃなかったから。「いねえのか、コラ!」じゃなくて「いるか?」って感じで。さすがに闇金とかだったら、俺もヤバい目に遭ってただろうけど。親父は知り合いに借りてた金を、返してなかったんじゃないかなあ?
家に来るのが怖い人でなかったのもあったけど、そういうのよりもキツかったのが寂しさ。だってさ、両親は共働きでどっちも定時なんてない仕事だから帰ってこない。小学校から帰ってきても、家にいるのは寝たきりのおばあちゃん。そこに俺だけか、兄貴といるかだからね。
――たしかに寂しいですね。
武田 台風の時なんて、家がガタガタするから怖くてね。怖いのもあるけど、そういう場に俺だけ1人っていうのが寂しくて。1年生とか小さな頃は、寂しくて泣いてたこともあったし。
――そこへ、祖母の介護もあったと。全般的に面倒を見られていた?
武田 まあ普通に、寝たきりであまり動けなかったから「あれやって、これやって」と言われたことはやってあげて。お漏らしをしたら、お風呂場に連れて行って流してあげたり。うんちを掃除したイメージ、それがすごく残ってますね。おばあちゃんは、俺が中学生の時に亡くなったんだけど。
まあ、大変もなにもやらざるをえないじゃない。さっきも話したけど、お腹が減ったって誰もいない。だったら、自分で作るなり、買いに行くしかないんだから。