「親が習い事としてやらせれば子どもは科学に裏打ちされた方法で運動能力をどんどん伸ばしていきますが、そうでない子はまったくやらない。それが両極化の主な要因だと考えられます」

 子どもたちの運動能力が二極化した理由を、ジャーナリストの石井光太氏の新刊『ルポ スマホ育児が子どもを壊す』(新潮社)より一部抜粋してお届けする。(全2回の2回目/前編を読む)

運動能力の二極化はなぜ進んだのか? 写真はイメージ ©getty

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できる子とできない子、両極化する運動能力

 ここで押さえておかなければならないのは、子どもたち全員の運動能力が低下しているわけではないということだ。

 発育発達学が専門の引原有輝教授(千葉工業大)に聞いたところ、子どもの運動能力は全体的に下がっているというより、両極化しているのではないかと語っていた。

「今の子どもは、運動ができる子と、そうでない子の差がかなり開いているように思います。できる子は昔の子よりずっとできるけど、できない子はずっとできない。中間層が減っているのです。できない子が全体に増えているにもかかわらず、できる子がすごくできるようになっているので、国が示すデータほどできない子の運動能力の低下が目立ちませんが、できない子の問題は深刻だと思っています」

 たしかに運動能力の低下が叫ばれている一方で、子どもたちの各種目における「最高記録」は伸びている。

 小学生ではないが、わかりやすいのは、甲子園出場校のピッチャーの球速だ。昔は130キロ前後が普通だったが、最近のピッチャーは140キロ台を出すことが珍しくないし、150キロ台に届くこともある。一方で、同じ高校生の中にはボールを投げることすらできない子もいる。こう見ていくと、両極化という指摘は十分にうなずける。

 引原教授はつづける。

「原因として考えられるのは、親の意識や取り組み方の差です。今の子ども達は、気兼ねなく外遊びできるような仲間や時間そして場所(空間)がありません。そのため、週当たりの習い事の数(種類)も多くなっており、親が運動系の習い事や地域の活動に熱心であれば、子どもには身体活動への好循環が生まれて、運動能力をどんどん伸ばしていきます。しかし、そうでない子はまったくやらない。それが体力の両極化の要因の一つになっていると考えています」

 たしかに親がやらせるかどうかは大きい。