同級生を叩いた子を注意したら、「先生にパワハラを受けた」と言って不登校になったという事例も…。止まらない校内暴力に学級崩壊。今、教育現場では何が起きているのか? ジャーナリストの石井光太氏の新刊『ルポ スマホ育児が子どもを壊す』(新潮社)より一部抜粋してお届けする。(全2回の2回目/前編を読む)
◆◆◆
絶対に先生は僕を嫌ってる!
先生はつづける。
「今の子はすごく打たれ弱いといわれていますよね。私としては子どもたちが打たれ弱くなったことにも、親の甘やかしが関係しているように思っています。甘やかす親は、子どもが間違ったことをしても注意しません。子どもに嫌われたらどうしようと考えて黙っているのです。そのような家庭で育つ子どもは、大人から何かを指摘されたことがないので、注意されると信じられないくらい大きなショックを受けます」
先日も、先生のクラスで、ある子どもが忘れ物をしたそうだ。何日も同じことがつづいていたため、先生は「メモを取って忘れないように気をつけましょう」と言った。普通の子どもなら「はい」と言って終わる。だが、甘やかされて育った子どもは、「先生に悪口を言われた」「先生も学校も大嫌い」と落ち込み、学校に来なくなったという。
大人が感情的になって叱り飛ばすことと、間違いを指摘して正すことは、根本的に異なる。幼い頃から、家庭で親にきちんとした指導を受けてきた子は、先生が自分のためを思って言ってくれたのだとわかるので素直に聞き入れる。
一方で、そうした経験に乏しい子どもたちは、自分を否定する言葉はすべて罵詈雑言だと受け止める。ゆえに、「先生は僕のことを嫌っている」「自分は学校にいちゃいけないんだ」などと被害妄想を膨らます。
子どもが打たれ弱くなっているという話は、他の先生においてもほぼ共通認識だった。それを実感する出来事として挙げられたのが次のような例だ。
・学校でタブレットをやたらと近づけて見ていたので、「画面を見る時はもう少し目を離しなさい」と言ったら、その場で号泣しはじめた。
・同級生を叩いた子を注意したら、「先生にパワハラを受けた」と言って不登校になった。
・教科書の音読で読み間違いを指摘したところ、家に帰って親に「先生が私のことをみんなの前でバカって言った」と言いつけた。
・子どもたちが一株ずつアサガオを育てていた。あるアサガオが枯れかけていたので、先生が「ちゃんと水をあげなさいよ」と言ったら、子どもは「このアサガオが不良品なんだ!」と反論してきた。
・少年野球の試合で監督に「今日は調子悪いな」と言われて途中交代を命じられた。その子は「自分だけ差別されている」と言って少年野球をやめた。