どの例も、大人が理不尽に子どもを叱っているわけではない。物事がより良く回るように指導しているだけだ。それを「不条理に怒られた」と受け止めているのは、子どもの方だろう。
止められない学級崩壊
小学校で校内暴力が増えれば、教室はどんどん荒れていく。そうして起こるのが学級崩壊だ。
教室では子どもの暴力に加え、本書のプロローグで見た“静かな学級崩壊”も起きている。だが、先生方にしてみれば、それを抑えるのは至難の業だそうだ。
先生が子どもたちに指導できない一因が、発達障害との関係だという。学校の中で発達障害の線引きや対応が決まっていないがゆえに、子どもの奇行を注意できないのだそうだ。
これを教えてくれたのは、プロローグに登場する副校長だった。
「小学校には特別支援学級がありますが、通常学級にも発達障害のあるお子さんはいます。保護者が自分の子を特別支援学級に入れるのを拒んだり、診断を受けさせたがらなかったりするので通常学級に入ってくる。もちろん、グレーゾーンの子もいます。クラスにもよりますが、多いと5、6人いる。そういう子たちが授業中に問題行動を起こすことがあるのです。障害がある子に対する対応は簡単ではありません」
文科省の2022年の調査では、小学校や中学校の通常学級に通う子どものうち、発達障害の可能性があるのは8.8%とされている。35人学級なら、クラスに3人の割合だ。
発達障害の症状や重度はそれぞれだが、集中力がつづかない、音や臭いに過敏になる、自己表現が不得意、言われたことを理解できないなどといった特性から、教室で和を乱すような行動に及ぶ場合がある。
現在、学校では、子どもたちに発達障害があった場合、その特性を認めようという流れになっている。朝礼で一列に並んでいるのがつらければ並ばなくていい、みんなと給食を取れなければ校長室で食べていい、といったような具合だ。
注意欠陥にせよ、感覚過敏にせよ、発達障害のある子どもが自らの特性をコントロールするのは至難の業だ。そういう意味では、学校側の方向性は間違いではない。問題は、誰の行為をどこまで容認するかが定まっておらず、現場の先生の判断に委ねられている点だ。
副校長は言う。