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瞬発力や美しい着地が強みの谷川選手

――跳馬最高難易度の大技「リ・セグァン2」を決められる谷川選手は、跳馬のスペシャリスト。パリでも大技への挑戦を期待してしまいます。

冨田 高校ぐらいから「リ・セグァン2」に挑戦していましたから、やるんじゃないでしょうか。

谷川航。団体総合の跳馬で世界最高難度の大技「リ・セグァン2」に挑み認定はされなかったが高得点を決めた ©JMPA

――昨年のアジア競技大会では、日本選手では45年ぶりとなる種目別跳馬で金メダルを獲得していました。

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冨田 そうですね。彼の自信に繋がったんじゃないかなと思います。瞬発力や美しい着地が彼の強みで、跳馬だけでなく床や平行棒も得意な選手です。

将来が楽しみな岡選手、あん馬で大技を決められる杉野選手

――日本は長らく吊り輪を苦手としてきましたが、20歳の岡選手は吊り輪でF難度を決めるなど、チームに勢いをもたらしてくれそうです。

冨田 彼は私が指導をしていませんが、その才能は早くから体操界で話題になっていました。15歳で出場した世界ジュニア選手権で団体総合と個人総合で金メダルを獲得していますし、将来が楽しみな選手です。

予選で日本トップの全体2位につけた、チーム最年少20歳の岡慎之助 ©時事通信社

 杉野選手はあん馬や鉄棒が得意。特にあん馬ではH難度の大技を決められる数少ない選手です。彼は団体の最終種目の鉄棒でも演技をする予定なので、メダルの色を左右するかもしれません。

あん馬、跳馬、鉄棒の3種目でいずれも14点台後半をマークした杉野正尭。とくに跳馬では高いEスコア(Execution Score、出来栄えなどをもとにした点数)で、完璧な演技を決めた ©時事通信社

 ライバルは中国、アメリカになりそうですが、日本は昨年の世界選手権でも金メダルを獲っていますし、彼らは自信を持って臨むのだろうなと思っています。

 日本が追求してきた「美しい体操」もアドバンテージになるはずです。体操のルールは、五輪が終わるたびに少しずつ変わっています。そのたびに新しい技を取り入れてくる選手が増える。そうすると、演技にはより洗練さが求められるようになる。無駄のない動きだとか美しいフォームといったところにフォーカスされる。

体操の男子予選を終え、記念撮影する(左から)橋本大輝、岡慎之助、萱和磨、杉野正尭、谷川航 ©時事通信社

 アクロバティック的な動きを得意とする海外勢よりは繊細な動きで高度な技を決める日本の体操は、今、有利なのではないかなと思います。選手たちの活躍を楽しみにしています。