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自分には何の罰も加えられないとタカをくくって自首したはずが…
石川さんの遺族は、殺害されたことを知らず、26年にわたって行方不明者として捜索していた。男が自宅の床下に掘った穴に埋めて死体を隠匿したため、遺族は石川さん死亡の事実を知ることができず、損害賠償請求権を行使する機会がないまま本件殺害行為から20年が経過した……ということである。
公訴時効の成立や民法の排斥期間を知っていた男は、自分には何の罰も加えられないとタカをくくって自首したことだろう。この裁判結果は、まさしく青天の霹靂であっただろう。
そもそも男が警察に出頭したのは、良心の呵責に耐えかねたとか、自責の念に苛まれたなどといった殊勝な理由からではなく、あくまで道路拡張工事という外的な要因によって、自宅の立ち退きを迫られ、やむなく自己保身のために自首したからだ。自責の念があれば、もっと早く自首して罪を償っていたはずである。
区画整理という日常的に起こり得る出来事が、26年もの長きにわたる“未解決事件”の真相を明るみに出した。もし区画整理の計画がなければ、いまだに事件は闇の中、未解決事件として処理されていたのかもしれない。
偶然が“未解決事件”を解決に導くことも、あるのだ。