今なお、波紋は広がり続けている。

 7月27日、パリ五輪柔道男子60kg級準々決勝のできごとだ。永山竜樹とフランシスコ・ガルリゴス(スペイン)が対戦。

 問題となったのは、絞めめ技に入るガルリゴスに対し永山が耐えている中、審判が「待て」をかけた後のことだ。力を抜いた永山に対し、ガルリゴスは絞め技を数秒間継続したことで一瞬、意識を失った。2人がばらけたあと、畳に仰向けになった永山は失神したとみなされ一本負けを宣告された。

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「待て」の後も絞め続けられ、仰向けに伸びた永山 ©JMPA

 試合後、永山は約5分間畳の上で抗議し、鈴木桂治監督らも抗議。だが審判団は、「落ちたよね」と言うばかりで、「待て」の後も絞めを継続したことに関することに関して満足な答えはなかったという。

 前提として、「待て」がかかれば試合は中断する。当然、選手はそれを前提に試合をしている。にもかかわらず、絞めを継続していたことは映像を観返しても明らかだ。

「待てが聞こえなかった」というガルリゴスの釈明が正しければ…

 ガルリゴス自身は地元紙で「待て」が聞こえなかったと話している。たしかにその可能性がゼロとは言えない。実際、試合のときに審判や周囲の声が聞こえないことがあると選手から聞いたことはある。また、動作が止まらないので繰り返して主審が「待て」と指示する場面も目にしたこともある。

永山を絞めるガルリゴス、審判からはその様子が見えていたはずだ ©JMPA

「聞こえなかった」というガルリゴスの釈明が正しいなら、今度はまず審判に問題があることになる。「待て」を告げても絞め技を続けていれば、ただちにやめさせなければならない。でも審判はただ見守るように立っているだけでアクションは起こさなかった。自ら選手に働きかけて止めなかったことに問題の1つがある。

 もう1つは審判団の説明だ。鈴木監督が問題にしたのは「待て」の後も継続されたこと。鈴木監督は「柔道精神に則っていない」として抗議したというが、そもそも一方がルールを守らなかったことだ。絞め技の危険性を知ればなおさらだ。でも、それに対する回答はなく、ただ1つ認めたのは「待て」が間違いだったということだったという。論点がずれている、あるいはずらされているのではないか。

 いずれにせよ、「誤審」とも言える、不可解な判定がなされたことは間違いない。