その姿をテレビ越しに見て憧れを抱くのではなく、「あ、私もこれできるじゃん」とスイッチが入り本気でメダルを狙いに行くことを決意したのというストーリーは、もはや1日で日本中に知れ渡ったことだろう。
その後、筆者は何度も彼女の「ビッグスピン・フロントサイドボードスライド」を写真に収めてきたが、失敗した姿を見た記憶がない。しかもそれを超える「ビッグスピンフリップ・フロントサイド・ボードスライド」をパリ五輪の本番で成功させているのだから凄まじい。それは西矢が過去に見せた最高難度のトリックであり、完成度をさらにアップグレードさせている。
女子のスキルレベルの急激な向上を象徴する吉沢の金メダル獲得だった。
なぜ女子スケートボードは若い選手が活躍するのか
さて、「13歳、真夏の大冒険」に続き「金メダルに恋した14歳」と他の競技に比べ10代前半の若い選手の活躍が目立つ女子スケートボード界。
なぜここまで次々と若い選手が出てくるのか不思議に思う方もいるのではないだろうか。
筆者が思う最大の要因は「環境の整備」。日本の公共スケートパークの数は3年前の東京オリンピック時と比べおよそ倍に増えている。
練習場所が整備されれば当然スクールは増えるし、数が増えれば質も上がってくる。さらにコンテストの参加者も増えるといった好循環が若年層の活躍を生んでいると考える。
そのため整備された今の環境で始めている10代前半の選手と、20代の選手では根本が全く違うと言えるだろう。
今のような質の高いスケートパークや指導スタイルが確立される前の世代が、いくら努力や練習を重ねたところで限界があるだろう。
しっかりとした施設と指導者の元で幼少期に基礎を完璧にマスターしたかが重要なのだ。
ただ、今は増加を続けるスケートパークも伸び率は落ち着きを見せ始めている。
一通り全国に施設と育成システムが浸透したのなら、今後は年齢の壁を打ち破っていく選手の出現も期待したい。
そこへの挑戦を表明している吉沢恋のこれからにも大いに注目が集まる。