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しかし、この事故ではフェラーリが制限速度(50km/h)の2倍以上の120km/hという速度を出していた事実があるため、過失割合は大きく変わってきます。

フェラーリは38.5m前で右折してくるワゴンRに気づいて急ブレーキをかけたとのことですが、120km/hは秒速33.333mです。38m手前での急ブレーキでは衝突回避は不可能でしょう。また、ブレーキが掛かり始めるまでの空走時間は判例などで平均0.75秒とされています。そこを考えると衝突時の速度は120km/hからほとんど落ちていなかったと思われます。

ワゴンR側にも落ち度はありますが、過去の裁判でも秒速33.3333mで走ってくるクルマの予見可能性は相当に低くなると判断されて過失割合は下がるでしょう。フェラーリのように車高の低いクルマであれば実際の位置よりも遠くに見えるためワゴンRも『右折できる』と判断を誤ったのでしょう」

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シートベルトの有無が生死を大きく分ける

この事故では事故直後も判決が出されたあとも、医師に対する激しい糾弾の声ばかりが上がっていて少々違和感を覚えている。なぜなら数々の報道を見ても、孫にベルトをさせていなかった祖父の過失について触れたものは皆無。これではまた同じような死亡事故が起きる可能性が十分にある。

避けられない事故だったとしても、ベルトを正しく着用していれば少なくとも車外に放り出されて死亡することはなかっただろう。

たとえフェラーリが制限速度の50km/hで衝突した場合でも、ベルトなしの乗員は想像以上に簡単に車外放出されてしまう。公益財団法人交通事故総合分析センターの調査でも、車外放出による死亡事故は時速40km/h程度の衝撃でも起こりうるとしている。車外放出を防ぐにはシートベルトの適切な使用が最も有効であることは言うまでもない。

身長150cmまではジュニアシートを使うべき

また、一般道路であっても後部座席であっても、ドライバーにはすべての乗員にシートベルトを適切に装着させる義務がある。