巷で話題の新しいバイト紹介アプリ「タイミー」。新聞社の正社員から週刊文春の契約社員に転身した女性記者(28)が、日常のぽっかり空いたスキマ時間を利用する夢の副業生活に挑む。

 ついでに、そのルポを書いて原稿料も稼ぐ腹だが、そのスキマバイト生活には様々な困難が――。

(全4回の2回目/続きはこちら

ADVERTISEMENT

 ◇◇◇

7月某日 千代田区・某宴会場 (午後5時30分~午後8時30分)

 アプリでバイトを探していると、この日の夕方、JR四ツ谷駅付近の某宴会場での求人を発見した。場所と時間になんだか見覚えが……。なんと、この日予定されていた、週刊文春編集部の歓送迎会の会場とピタリと一致している。さすがにこの機は逃すまいとギリギリに応募し、即採用。「ホテル・立食経験者限定!」と書いてあったが見なかったことにした。

 エプロンとベストを着て、オードブルや飲み物を並べる。この日はもうひとり、細身でダンディな50代くらいのおじさんがいて、あまりに慣れた動きなので常勤かと思ったらタイミーさんだった。以前はホテルで長く働いていたが、コロナで辞め、タイミーで立食の仕事に復帰したそうだ。

申し込んだ宴会場の給仕バイトは編集部の歓送迎会だった

 18時スタートだが、17時45分くらいになっても誰ひとり会場に来ない。バイト2人がそわそわしていると、店長が落ち着いた様子で「ああ、週刊……。きっとギリギリに来ますよ。ああいう業界の人ってのは、忙しいって思われたいからね」。小さなプライドがバレすぎていて面白い。開始5分前、見飽きた顔が続々登場。向こうは宴会場のスタッフの中に見知った顔を発見して一様にギョッとしている。「何してんの? 文春は辞めたの?」

 3Kなどと言われがちな週刊誌の現場に異動してくる編集者の絶望混じりのあいさつや、他部署へ異動する先輩記者の長い男泣きを、タイミーのおじさんが興味深げに聞いている。政財界の裏話から編集部内のトラブルまで、そこかしこでアブなそうな話が飛び交っている。聞く気がなくても耳に入る。私が文春で働いていなかったら、絶対翌日友達に一部始終を喋っちゃいそうだな、と思った。(情報漏洩のリスクが気になり、後日タイミーに対策を聞いた。「規約で禁止しており、発覚した場合は利用停止などの措置をとる」とのことだった)

(バイト代:時給1300円 プラス交通費500円 計4400円)