日常でぽっかり空いたスキマ時間に気軽に働けるアルバイトを紹介する「タイミー」。スキマバイトという言葉を世に浸透させ、株式市場に上場も果たした業界最大手が提供するサービスとはどんなものなのか。
「週刊文春」で働く女性記者(28)が、実際にアプリを使ってスキマバイトの現場に潜入。巷間持て囃される新しい働き方の現実を、バイト代を稼ぎながら追った。
前回、思ったより仕事が早く終わった記者の脳裡には、絶好のアイデアが閃いて――。
(全4回の3回目/続きを読む)
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7月6日 中央区・喫茶店チェーン (午後4時~午後8時)
タイミーは1日に1件しか申し込めず、短時間の求人が多いので、いざがっぽり稼ごうとすると効率が悪い。なんとか「スポットバイト」で生計を立てる方法はないものか……と考えた挙句、思いついたのは他のアプリと「掛け持ち」だった。
タイミーの代表的なライバルアプリは、後発のメルカリが運営する「ハロ」(リクルートの「タウンワーク」も今年秋の参入を発表している)。さっそくインストールしてみると、募集は配達や引越しばかりで、タイミーに比べると求人の総数もバリエーションも乏しい。正直、雲泥の差である。
しかし、豊洲のバイト明けのタイミングには、中央区で制服が素敵な喫茶店チェーンの募集があった。勤務開始は1時間後。あわてて応募、即採用。豊洲からその足で向かって始業にギリギリ間に合った。そして、地獄を見た。
ドアを空けると満席御礼。塩顔の若いバイトリーダーに、「メルカリさん、カフェしたことは?」と聞かれる。「いえ、カフェするのは初めてです……」と応じると、ため息をつかれる。
「今教える暇が無いから。見ながらやってみて。お客さんがきたら水とメニューを出して」
この日は土曜日、週末の午後は喫茶店のピークタイムなのだった。降り始めた雨もあいまって、客はひっきりなしに入れ替わる。先輩バイトも忙しく立ち回っており、こちらに指導する余裕はなさそうだった。
見よう見まねで、入店した人を席に案内し、メニューを渡し、水を出す。メモとペンでオーダーを取り、注文の品にシロップやミルクを添えて提供する。文字にすればこれだけのことだが、とにかく数が多いので大混乱。
水を出し忘れたり、案内したきりの客に「注文いいですか」と2回くらい言われたり、座席に振られた数字を間違えて、別の注文を供してしまったりとミスを頻発してしまった。
「メルカリさんにここまでやらせるほう(=雇い主)が悪いから!」という責任転嫁が脳裏をかすめるが、客にとってはそんなことは関係ないので「大変お待たせしました」だけは心を込めて言うしかない。