流行りのスキマバイトアプリ「タイミー」で副業生活をくわだてる「週刊文春」の女性記者(28)。

 職場で「タイミーさん」と呼ばれ、責任を負わされず、特に存在を気にかけられないような扱いをされながらも、スキマ時間を見つけては忙しく働き、バイト代を稼ぐ。だが、そんな記者の前に「スキマ時間」を奪う本業の壁が厚くたちはだかり――。

(全4回の4回目/初めから読む

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7月8日 千代田区・宴会場 (午後4時30分~午後7時40分)

 タイミーには、店側がお気に入りのタイミーさんに先行して直接バイトオファーを出す「リクエスト機能」がある。リクエストをもらったのは、数日前、週刊文春の歓送迎会があった宴会場から。店長さんは「なんか楽しそうにしてたから」とのこと。

編集部の歓送迎会に“タイミーさん”として参加する記者(第2回参照)

 今のところ私のことを記者ではなく、文春に出入りしているバイトだと思っているようだ。まあ似たようなものではある。宴会場の仕事自体は今回も楽しそうだが、不安な点が。デスクと別件で電話したときに「えっ! 今日もタイミーさんやるの!?」と正気を疑われてしまった。というのも、週刊文春の原稿はだいたい月曜提出、火曜校了。つまりデスクはこう言いたかったのだ。「いやあんた今日は、原稿書く日だろ」と。

 何件か日中のアポや電話取材もある。夕方までに全部終わらせることができれば大丈夫かな、バイトキャンセルした方がいいかな、と途端に心配になってきた。だが、「求人の現場に現れること」が、タイミーさんに求められている唯一かつ最大の責務だと、この間のバイト人生で思い知らされている。直前に仕事をキャンセルすることは、もっとも許されざる行為なのだ。