トイレの壁の広告収入と利用料で、パリ市はお金を出さなくてもいいという皮算用があったのだが、そうはいかず、パリ市は2003年には当時のレートで毎月約15万円の補填をしていた。そういうわけで、試験的にいくつかの「サニゼット」を無料にしたが、「無料のところのほうが、他よりも問題が少なかった」ということで2006年から全面的に無料になった。 

 使用効率を上げるために、外に男性小用を加えたものができた。たしかに、待ち時間が減り、使い勝手が飛躍的によくなった。といっても、改修は遅々として進まず、パリ市全体で50カ所だけだった。

旧型の男性小用ナシのトイレ

 そこに、オリンピックである。男性小用をはじめから組み入れた最新型がつくられた。

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最新型トイレと情報アプリが登場

 最新式は、パリ市の発表によれば、現在の設備と比較して水の消費量がほぼ3分の2、電力の消費量が3分の1削減され、100%再生可能エネルギーがつかわれているという。また、内部の洗浄消毒時間も短縮され、待ち時間は従来の3分の1の30秒になった。

最新型のトイレ

 パリ市は、435個の「サニゼット」があり、今年の2月から順次交換し、7月までにそのうち150カ所が最新型になったとしている。まるで前から435あったような書き方をしているが、増設したものもある。実際、エッフェル塔の近くなどでは5月頃、前になかったところに設置されて「7月1日から使用可」と書いてあるものがあった。

 この他に、公園などで、男性小用を含めて300を超えるトイレがあるから十分対処できるという。

 またオリンピック期間を前に、「Ici Toilets(ここがトイレ)」というアプリケーションが導入された。地方のスタートアップ企業が開発したもので、トイレを貸してくれる商店などにトイレットペーパーの購入資金として地方自治体が負担する月額120ユーロが支給される。すでに地方都市で実績があり、観光省の外郭団体のプロジェクトに選ばれた。だが、6月から始まった実際のサービスを見ると、加盟店は少なく、カフェやレストランばかり。「サニゼット」の位置が分かるのは便利なのだが、それなら前からパリ市のホームページで見られる。