「雰囲気はとっても親しみやすくていいんだけど、食事はダメだ」

 東京五輪の陸上100m金メダリストのラモントマルチェル・ヤコブス選手がオリンピック選手村について語った言葉だ(「Le Parisien」Web、2024年7月31日)。

 大食堂は3300席で1日4万食、献立の種類500以上、そして1日1000本フランスパンが消費される。運営を請け負っているSodexo Live!社の運営ディレクター、ローラン・パストゥール氏はParis2024の公式サイトで、「選手村では、食事サービスが重要な役割を果たします。エリートスポーツに適したメニューを提供し、200以上の国々からの選手たちの期待に応えることで、選手たちのパフォーマンスに貢献し、誰もが自宅にいるように感じてもらえればと思います」と抱負を語っている。

 ところが、選手村に入った選手たちから続々と不満が上がった。

オリンピック選手村のフードカウンターに立つ女性アスリートたち ©getty

「あまりにまずい」と酷評された選手村の朝食

 アメリカの砲丸投げのレーベン・サンダーズ選手は、SNSで黒焦げになった肉の串焼きのビデオを公開した。ハイチのハードルのエメリア・シャフィールド選手は「あまりにまずい」と10点満点中0点だと投稿した。ホンジュラスの競泳のユリオ・ホレゴ選手は、10時半に「朝食を食べに来たのに卵がない」と29日にフランスのAFP通信に語った。

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パリ五輪の選手村(FNNプライムオンラインより)

 英国オリンピック協会は、すでに、選手村の外に自国選手のための施設をつくっていたが、その食堂に英国からシェフを増員し、そこで食べるようにした。もともと、英国のメディアは「カエルを食べる人間」だとか、フランスに対して辛辣で、評判が良かった開会式でもわざと雨に濡れる観客の姿を大きく出して「レ・ミゼラブル!」などとこき下ろしていたが、当然、ここぞとばかりに報じた。

 Sodexo Live!社は、これらの批判を「真摯に受け止め」実際の消費状況に基づいて供給を改善するとした。原料の供給はスーパーマーケット大手の「カルフール」が行っているが、急遽合計で700kgの卵と1トンの肉が届けられた。

 フランスの競泳のマリー・ワテル選手は「組織委員会は、アスリートがたくさん食べることを過少評価したのではないか」という。日本人の成人男子に必要なエネルギー量は1日2500キロカロリーといわれているが、水泳選手は5000キロカロリー必要である。