被害者のなかにはわずか9歳の女の子も…。己の残忍な欲望を満たすため、12人の若い女性を強姦・殺害したフランスの連続殺人犯、ミシェル・フルニレ。「処女としたい」という身勝手な欲望を叶えようとする彼を、妻も支えた“恐るべき理由”とは? 新刊『世界の殺人カップル』(鉄人社)より一部抜粋してお届けする。(全2回の1回目/後編を読む

 処女とすることを願望に持つ夫。そんな「彼の恐るべき計画」に、なぜ妻は協力したのか…? 写真はイメージ ©getty

◆◆◆

フランスの残虐非道のシリアルキラー

 1980年代後半を中心に、フランスで残虐非道の限りを尽くしたシリアルキラーがいる。ミシェル・フルニレ。処女信仰に取り憑かれていた彼は、妻のモニク・オリヴィエとともに若い女性12人を誘拐・強姦・殺害し「アルデンヌのオーガ」の異名を取った。オーガとは残忍な性格で容赦なく殺人を犯す、ヨーロッパ諸国の伝承に登場する人形の怪物である。

ADVERTISEMENT

 ミシェルは1942年、フランス・アルデンヌ県スダンで、金属加工業の父親と専業主婦の母親の次男として生まれた(兄が1人、妹が2人)。その生い立ちは不明ながら、後に本人が精神科医に語ったところによれば、4歳のころから母親に近親相姦を強制され歪んだ性格を形成したという。両親の離婚後、彼を引き取った父親は重度のアルコール依存症で一切の育児を放棄する。

 荒すさみきった環境下、ミシェルは学校でも同級生の持ち物を盗むなど問題行動を繰り返し、その手癖の悪さは成人になっても変わらなかった。大工の職に就いていた1964年に結婚したものの、2年後も窃盗と暴行の容疑で逮捕、実刑判決をくらう。呆れた妻に見捨てられ、1970年に別の女性と再婚。しばらくはまともに暮らしていたが、1984年に5人の少女を強姦し懲役5年の判決を下される。

 この一件で2番目の妻とも離婚することになったミシェルは獄中から雑誌に「孤独を忘れるため、年齢を問わず誰とでも文通したい」とのハガキを出し、文通欄に掲載される。これに目を止めたのがモニク・オリヴィエ(1948年生)だ。2人は当初、手紙とのやり取りだけだったが、モニクが幾度も刑務所へ面会に訪れたことで仲が急接近。

同事件はNetflixで映像化もされた(画像:Netflixより)

 1987年10月の仮釈放後に結婚しヨンヌ県サン・シル・レ・コロンに居を構えた。

 ここで、ミシェルは文通でも明かしていた己の強い願望を改めてモニクに話す。処女に凌辱の限りを尽くしたい。理解しがたいが、彼は10代後半から処女を犯さなければ生きていけないという強迫観念にとらわれていた。対してモニクは夫の欲望を満たすための協力を買って出る。ミシェルに惚れていたことは当然として、彼が口にした提案が大きかった。犯行に加担すれば元夫を殺してくれるというのだ。モニクはミシェルと出会う前に、自分に酷いDVを働いた夫と離婚しており、いつか復讐することを誓っていた。それをミシェルが代わって果たしてくれるなら、願ったり叶ったりだ。

 こうして夫妻は犯行を開始する。1987年12月11日、ヨンヌ県オセールで高校から帰宅途中のイザベル・ラヴィル(当時17歳)がさらわれた。彼女は2日ほど前から夫婦が狙っていたターゲットで、このときモニクは車で家まで送ってあげると彼女を同乗させ、別の場所で車が故障したふりをしながら待機していたミシェルのもとに直行。