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「おまえの妹を俺に差し出せ」

 ポールはカーラの気持ちを弄ぶように、徐々に彼女の心を支配していく。動物好きなカーラが獣医を目指し働いていた動物病院でのアルバイト代は全てポールとのデート代に消え、ポールの気分しだいで所構わずセックスを強いられた。やがて暴力も日常茶飯事となり、付き合って3年も経つとポールはすっかりカーラに飽きてしまう。そして、1990年12月初旬、ポールはカーラに信じられない言葉を口にする。

「おまえは俺が初めての男じゃなかった。ふざけるな。その責任を取るため、まだ汚れていないおまえの妹タミーを俺に差し出せ」

 カーラの衝撃は大きかった。タミーは幼いころから可愛がっている大切な妹。そんな彼女をポールに抱かせるなどありえない。しかし、当時のカーラは完全にポールに依存しており、1日の大半を彼の機嫌を取るために費やす、言わば奴隷と主人のような関係に陥っていた。さらには、数ヶ月前からポールが自分に女性としての興味を失っていることも不安だった。ポールに捨てられたくない。ポールの心を繋ぎ止めておくには、彼の命令に従うよりない。正常な判断能力を失っていたカーラは戸惑いながらも、踏み越えてはいけない一線を越える覚悟を固める。

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 ちなみに、このころ、ポールは勤務していた会計事務所を辞め、アメリカからの酒や煙草の密輸で生計を立てていた。同年12月24日、当時15歳のタミーは今晩自宅で行われるクリスマスパーティーを楽しみにしていた。社交的で美貌も兼ね備えた彼女はこの日、学校が終わると母親へのプレゼントを買い帰宅する。ほどなく、ポールが訪問しパーティーが始まり、一段落したところで、カーラがポールとタミーを誘い、3人で地下室で映画を観始めた。ここで、カーラはタミーの飲み物に薬物を混入する。

 せめて眠っている間にポールに抱かれてほしいと、事前にバイト先の動物病院から鎮静剤と麻酔薬を調達したのはカーラの発案だった。

 すぐにタミーは意識を失い、それを待っていたかのようにポールがビデオカメラに三脚をセットし始める。

写真はイメージ ©getty

 続いてカーラにタミーと交わるよう指示を出し、行為が始まるとポール自らもプレイに参加。このとき1階のリビングでは両親と、真ん中の妹ローガンが何も知らずパーティーの余韻を楽しんでいた。と、突然タミーが覚醒し、嘔吐し始めた。必死に妹の背中をさすり介抱するカーラ。せっかくの楽しみを邪魔され憮然とするポール。事態はすぐに両親にも伝わり、タミーは病院へと救急搬送されるが、翌日に息を引き取る。

 死因は嘔吐物を喉に詰まらせた窒息死と断定され、遺体の解剖は行われなかった。こうして犯罪の発覚を免れたポールとカーラは、タミーの死によりその絆をより固くし、同時にもはや後戻りができないことを悟る。