賃貸に出すにも、家の中は昭和の遺物であふれかえり…

 安易な人間の安易な考えのように思えますが、実際どうやっても手放せないならせめて運用するしかありません。

 運用!

 すなわち賃貸に出すこと。1ヶ月1万でも2万でもいい。固定資産税ぶんだけでも入ってくれば、売れない地獄の再建築不可物件でもどうにかなる。……かもしれない。そうだ運用しよう。いまはやりの負動産投資だ。この家が売れないのはもう事実なんだから。

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 しかし賃貸に出すには、まず残置物の撤去が必須です。なにせ家の中は15年前で時を止めており、父と叔父の家なのに真ん中の叔父の遺物であふれかえっています。

 また、真ん中の叔父は救急搬送されてそのまま入院し亡くなったため、家の中は生活していたときのまま。簡単にいうと灰皿はそのまま、流しの排水溝の中は腐った生ゴミが乾いてプラスチックごと変形していたし(おええ)、エアコンは茶色い昭和のクーラー。ホームセンターで売っているような2段のハンガーラックにはクリーニングから戻ってきたままのシャツやスーツがずらり。もちろん奥行きのある巨大な箪笥にも服がぎっしり。寒冷地でもないのに引き出しにはセーターがぎゅうぎゅうのパンパンに詰められていて、樟脳の臭いまで乾いてる。

 兄ちゃん、なんで昭和の家は、服が多いのん?

 なんでなんでしょうねあれ。服は高いから、大事に長く着るのが習慣だった?

 それとも無駄に箪笥があるから保管してしまえた?

 おそらく祖母の婚礼箪笥の中もだれのものかわからない衣類で気が遠くなるありさまです。

 とにかく残置物の4分の3は叔父と顔も知らない叔母(?)の服でした。私に気力があればメルでカリして小銭を稼ぐぐらいのことはできたかもしれません。なにしろデザインが昭和。クラブの支配人をしていたらしい叔父の服はなんかもう見るからにバブリーで、演劇関係者や音楽関係の友人に声をかければもしかしたら欲しい人がいたかも。叔母の服も同様でした。

写真はイメージ ©AFLO

かくなる上はアウトソーシング…しかし仏壇の処分に10万円!

 しかし、そんな時間はない!

 かくなる上はアウトソーシング。

 出でよ令和の光スマートフォン。ぐぐれば一発、いくつも出てくる便利屋案内。たすけてだれか。こうなったらすぐにメル凸だ。

 それからなんとか時間を作って、片付け屋さんに見積もりに来てもらいました。まあこのとおりのゴミ屋敷。足の踏み場もないありさまですから、それなりにするとは覚悟していた。しかし……。

「仏壇がありますね」

「そうですね、でかいのが」

 ウワサには聞いて知っていたが、仏壇を処分するためには “仏壇じまい”が必要、つまり仏壇屋さんに来て貰わねばならず、お値段は10万からだという。

「じゅ、10万!?」

「仏壇処理だけに10万!?」

 いっそ、とち狂った私が般若心経唱えながらマキタのチェーンソーで破壊してやろうかと動転するぐらいにお高い。

「仏壇が大きいんで」

「ああ、そうですよね。うう、仏壇がでかいつらい。実家の仏壇って何でこんなにでかいんだ」