あまりに多い「昭和な」家具、家電の処理費用は…

 でかいのは仏壇だけではない。なんせ平成初期から時を止めている家。もっといえば、真ん中の叔父は家がないくらい貧乏だったので、生活用品は祖父が使っていたものをそのまま利用していたらしく、家電もぜんぶ昭和。冷蔵庫はナショナル。でかい。洗濯機はサンヨー、二層式。電気代をもりもり食う給湯ポットは象印。なんで三つもあるんだ。いや象印はすばらしいメーカーでいまもご健在ですが。

 窓に乱暴に打ち付けられた柱にとってつけた死んだ給湯器。茶色くて巨大なエアコン。四方八方ヤニをすいまくっている人の肺の色みたいな土壁。ふよふよしている畳の間。独特の昭和の臭いを放つ謎のビニール製キッチンの床。なんでオレンジ色が基調なの?

 昭和なの?(昭和です)。死に絶えた習慣おばあちゃんの三面鏡。暴力的な奥行きの和箪笥!

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 それらすべて片付けるための費用は、「80万です」

 ご丁寧にお帰りいただいた。はい次の業者。

「うーん、50万ですかね」

本書より イラスト:吉川景都

 ここから数社と話し合ってみたのだが、どんなに頑張っても40万円以下にはならなかった。というのも、あまりにもゴミの数が多すぎること。二階の和箪笥を階段で下ろすのが難しいため破砕しなければならないこと。家電はリサイクルセンターに持っていけないくらい昭和なので、完全に処理費が別途かかること。そしてゴミの量が多すぎて1日では終わらないため。

 40万。なかなかの金額である。ゼロ円でも売れないし寄付もできないボロ屋に40万かける意味があるのか。それくらいなら、これから固定資産税を払って放置したほうがましではないのか。

「もうだめだ」

地獄の負動産の相続…ここで断ち切らねば

 ここにきて完全に叔父はやる気を失っていた。おそらく40万円の処分費の半額を出してくれと言ってもなんだかんだとはぐらかされて逃げられる雰囲気だった。まあ気持ちはわかる。だって賃貸に出そうとすると、それだけでは済まない。水道も直さないといけないし、ガスは新しい給湯器設置だけで20万。風呂や排水の見直しや電気工事。もちろん雨漏りがないかどうかの点検などなど、100万近くかかるかも。そうなってくると、もうこのままなかったことにしたい、そう考えても仕方のないことだ。

 だが、叔父はそれでいい。ひどい言いようだが父も叔父も死ねば終わりだ。しかし地獄には終わりはない。負動産は相続される。うちの場合は母が、そして叔父の家は叔母が相続することになる。そして叔母も母も同年代だから、コロナでぽっくりいってしまうかもしれない。そのとき地獄の負動産を相続するのは私と妹、そしていとこだ。

 ここで断ち切らねばならないのだ。なんとしても……などというかっこつけても一円にもならないので、私はもてる労働力を投資することにした。すなわちうちの家人と息子である。出でよ若者、労働力様。

「祖父の家を片付けます。協力してください」