祖父が遺したのは、築75年のボロい一戸建てだった……。作家の高殿円さんは、相続した父と叔父に代わって“負動産”を売りに出すことに。しかし「売れない」という大きな問題にぶち当たってしまう。

 ここでは、高殿さんの実家じまいの一部始終を収めた『私の実家が売れません!』(エクスナレッジ)から一部を抜粋。さっそく買い手が現れたかと思いきや、契約締結の直前に起こった“予想外の事態”とは――。(全4回の1回目/続きを読む)

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日本は貧しくなった…ついに「空き家税」導入へ

 突然、京都市が、空き家に税金をかけるとか言い出しましたね。いわゆる空き家税。正式には「非居住住宅利活用促進税」といって、つまり空き家や別荘など住民税を払ってないやつからも利用料をきっちり取ろう。あるいは倒壊したり火事の原因になりそうな家は見た目もよくなく治安の悪化にもつながりかねないので減らそう、ということで、長年そこで生活をしている人たちからすると、こういう流れになるのも至極当然であると思います。

 が、問題は京都だけじゃないんだ。一つ導入されれば心強い前例によってわれもわれもと増えていくのが税金というもの。このニュースを聞いたとき、これは近い将来、全国的な問題になる。いまのうちに着手しなければ、と腹をくくりました。

 税金、どんどん上がってるのに、これ以上びたいち払いたくねえ。いままでは田舎のボロ屋なんて固定資産税もたかが知れてるし、まあ放置でいっかーと思っていた田舎にボロ家抱える勢、いたよね?

 ってかいっぱいいるよね。私だけじゃないよね。ああ諸行無常、日本は貧しくなった。まさかの「ボロだろうが地目山林だろうが放置してたら税金をかける」流れには驚愕、メロスでなくとも激おこですよ。

写真はイメージ ©AFLO

仲介業者さんにお願いして売りに出すことに

 叔父と父に頼んでもどうせなにも動かないのはわかっていたので、祖父の家からなるべく近い場所で長年、不動産業を営んでいる不動産仲介業者さんにお願いすることになりました。タウンページという黄色い凶器を探すまでもなく世は令和。我々は全員エデンでリンゴをかじったエヴァの末裔。ありがとうiPhone、ありがとうグーグルマップ。ありがとうありがとう業者一瞬で絞り込めたわ。

 不動産業者だけが見ることができる「レインズ」という業者専用SUUMO(説明雑……)みたいなサイトがあります。しかし我々素人でも、そんな専門サイトを見るまでもなく、ネットで近隣の家が近年だいたいどれくらいの相場で売れていったのか把握することは可能です。

 もっとも、仲介業者さんを入れれば、いくらで売りに出して実際はいくらで売れたのかとか、いつ売れたのかとか、そのへんの詳しいデータはきちんと報告書にしてくれます。値付けの根拠にするためですね。同じご町内のこれくらいのおうちはこのお値段で売れました。なので実際はこれくらいで売れるだろうと思われます、値引き交渉のことも考えて、プラス100万くらいで売り出してはどうですか、とかいう感じに進みます。