作家の高殿円さんの祖父が遺したのは、築75年のボロい一戸建てだった……。祖父の死後、その家に住んでいた叔父も他界すると、高殿さんは相続した父ともう一人の叔父に代わって“負動産”を売りに出すことに。
しかし、まさかの再建築不可物件であることが発覚する。過去に道路の拡張工事をしたかった市と隣家が取引をして、祖父の家に接している道路がすべて私有地になっていたというのだ。これでは、接道義務を満たしていないことになってしまう。
ここでは、高殿さんの実家じまいの一部始終をまとめた『私の実家が売れません!』(エクスナレッジ)から一部を抜粋して紹介。「売れない」家を前に、高殿さんが下した選択とは——。(全4回の3回目/続きを読む)
寄付も断られた地獄の負動産
ただでいいからもらってほしい。人は “負動産”を前にして必ずこう考えることでしょう。
例に漏れず我々もそう思いました。
「そうだ、市に寄付しよう」
市の暴挙によって無価値になった祖父の家を市に寄付するなんて、孔明の罠としか思えません。が、しかしそうするしかない。我々は、もう、この家を一刻も早く手放したいのだ‼
この接道義務を満たしていない再建地不可物件、地獄の “負動産”を。
もともとこの家に一番愛着があり、ただで手放すことに難色を示していた叔父は、それ以降も市に接道義務に違反しているのは市のせいなのだからどうにかしてほしいと何度も掛け合ったようです。が、
「無理ですね」
「そんな……」
絶望する叔父。いや、叔父も父も何も悪いことしていないのに。
じゃあせめて市に寄付するので無料で引き取ってほしいと訴えても、「寄付は受け付けていません」
日本よ、これが日本の公的機関だよ。私がもしありあまる財力を有し(以下略)、時間さえあれば議員さんを紹介してもらい、あらゆる権力のコネで外堀を埋めてから交渉ぐらいしただろうがここはなにせ地の利がない知らん土地!
私自身にもなんの愛着もない。(実際息子である父もそうらしい)。そこまで自分の信用リソースを割いてまでやりたくない。
というわけで、寄付も断られた地獄の負動産。
どうするどうなる。どうしよう。
「そうだ。売れないなら、貸せばいいじゃん」