あのファウルは河村の「ミス」だったのか?

 2004年のアテネオリンピックでアルゼンチン代表を率いてアメリカ代表を下し、金メダルを獲得したマヌ・ジノビリは、この試合の後に以下のような感想をX上に投稿している。

「経験不足は接戦の最終盤で大きなマイナスになる。フランスはほとんど奇跡的に日本を切り抜けた。楽しい試合だった」

 ファウルにつながった河村のプレーを「経験不足」と言い切っていいのかはわからない。審判によって判定が変わりうるプレーだし、シュートへのプレッシャーは最大限かけられている。笛が鳴らなければ、最高のディフェンスだった。

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 反対に、そのままチェックに行かずに3ポイントを決められていても、ファウルゲームに持ち込まれれば勝負の行方はわからなかった。ギリギリまでシュートチェックに行った彼の判断を責めることは誰にもできない。

 そもそも、その最後の一瞬にまで漕ぎつけたこと自体、ミスを恐れぬ河村の勇敢なプレーの賜物であり、それこそが日本代表のエンジンとなっていたことに疑いの余地はない。相手国フランスのメディアをして「不運のヒーロー」と言わしめた河村の活躍は、世界に強烈な印象を残すものだった。

八村欠場、絶体絶命のブラジル戦

 ブラジル戦に先駆け、八村の負傷欠場が発表された瞬間、SNS上ではブラジル人と思しきアカウントによる「サッカースタジアムで歓喜するブラジルサポーターの動画」などの投稿が見られた。日本と同じく、1勝2敗でのグループフェーズ突破を目指すブラジルにとって、相手エースの欠場は大きなアドバンテージと感じられたにちがいない。

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 ブラジルファンの期待どおり、そして日本ファンの落胆のとおり、試合は終始日本がリードを許す展開。しかし決して、勝ち筋が見えない試合ではなかった。第3クオーター中盤に16点のリードを許したあとも、ホーキンソンの3ポイントなどで追い上げ、第3クオーター終了時には4点差に食らいついていた。

 第4クオーター開始直後にホーキンソンの3ポイントで1点差に詰め寄るも、それ以降は守備で相手を抑えられず、また攻撃面でも有効な手段を欠いた。日本が8点を取るうちにブラジルは25点を挙げ、18点差の敗北でバスケ男子日本代表のオリンピックは幕を閉じた。

 試合後、ブラジルのキャプテンであるマルセロ・ウェルタスが寄せたコメントからは、ドイツ戦のダニエル・タイスと同様、日本代表の熱量に対する賞賛がうかがえる。