小池 当たり前の話ですが、まだご覧になっていない今現在の観客、特に若いみなさんに一人でも多く届けたいという思いです。例えば、去年受験生だった学生さんは、今年なら観られるかもしれない。人によっては、もしかしたら夏休みや正月休みがベストなタイミングではない可能性だってある。劇場が閑散期と言われるような時期に公開したほうが、足を運び易いかたもいるかもしれない。

 今回の復活上映では、新グッズとしてTシャツ、ジャージ、ユニフォームのキッズサイズを販売します。近年、子どもたちがバスケに触れる機会やチャンスが増えているような気がします。子どもたちが公園でバスケをやっている風景もよく見かけます。本作は、そんな子どもたちの間で、「何か面白いらしいから観に行こうぜ」という広がり方をしてくれるのが作品にとって一番幸せだと思っています。

 グッズの売上云々も大事ですが、それよりも、例えば子どもたちがTシャツを着てくれて、「それ、観たよ。面白かったよね」みたいな会話が生まれてくれることを期待した或る種の「願い」を込めて作られたグッズなんです。それが次の世代の観客にバトンを渡すことにも繋がるはずだという。

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多くのバスケット選手に影響を与えてきた『スラムダンク』

――本作は2014年に制作が決定し、コロナ禍を挟んで公開まで漕ぎ着けました。その間、世間におけるバスケットシーンの温度も大きく変わった気がします。

小池 その通りだと思います。Bリーグの盛り上がり、スター選手の登場、ワールドカップやオリンピックにおける日本代表チームの活躍、いろいろなことがその温度を作り上げていると感じています。

 そもそも、『スラムダンク』という作品は、後の多くのバスケット選手に影響を与えてきたと言われていますし、実際に井上監督ご自身も、『スラムダンク奨学金』を創設するなど、日本のバスケの普及やレベルアップに貢献されてきた。そういった長い時間をかけてバスケシーンに熱を入れてきた方々の想いが集まって本作の人気の追い風になったと思っています。

――本作は日本のみならず、これまでに122の国と地域で上映されました(※2024年8月現在)。特に反響が大きかった土地は?

小池 強いて挙げるなら、やはり中国と韓国でしょうか。特に中国は興収金額も突出していまして。

©︎石川啓次/文藝春秋

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なぜ中国、そして韓国で人気を博すことができたのか……。#2の「《中国の興収130億円超》「韓国も台湾もファンの熱量がすごい」世界が見た映画『スラムダンク』の魅力」へ続く