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「知らず嵐を呼び込んでしまう人」だからこそ、著書がテレビドラマの原作となり、自身がドラマの主人公になるような事態を招くのである。「家族だから愛したんじゃなくて、愛したのが家族だった」は、NHK-BSプレミアムドラマとして放送されたものが、1年を経て地上波で再放送となった。

「かぞかぞ」という愛称まで付いたドラマが好評の要因は、どこにあると考えているだろうか。

「それは何を措いてもまず『河合優実さんパワー』じゃないですか。私さんざん周りから『似てるねー』と言われていますが、それはひとえにいまをときめく河合さんが、全力で私に『寄せて』くれているからです。私の地元言葉である神戸弁まで、完璧なイントネーションで話されていてすごいです」

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 そう、岸田奈美さんをモデルにした主人公・岸本七実役に抜擢されたのは、若手実力派俳優として注目される河合優実さんである。

 その時点では、連続テレビドラマ初主演だった。「かぞかぞ」出演後は躍進が続き、ことしはテレビドラマ「不適切にもほどがある!」で好演、映画『あんのこと』『ナミビアの砂漠』で主役、劇場アニメ『ルックバック』では主演声優を務めている。

「河合さんは、中学生から社会人までの私をすべて演じています。家族のなかでの役割も、そのつど抱く感情も、場面によってコロコロ変わるのに、目まぐるしい感情のジェットコースターをみごとに乗りこなしていてすごかった。このドラマを通じて、俳優としての彼女に何か得るものがあったのなら、私もうれしいです」

岸田さんがドラマを見て感服したことは……

「かぞかぞ」の俳優陣でいえば、弟役の吉田葵さんにも感服したという。

「ダウン症であるウチの弟役として、ダウン症の役者さんをキャスティングされているんです。大々的にオーディションを開いて、あんなにスタイルがよくて、人前に出ることが好きで、努力もできる、スーパーな子役を発掘してこられた。

 ダウン症の葵くんは、セリフをいいタイミングで発せなかったりすることがある。ならばとずっとオンにした専用カメラで、いつ演技を始めても対応したり、たまたま撮れた表情を採用したりという工夫もされていました。そこまでできる現場ってなかなかないんじゃないですか。