NHKプレミアムドラマ「家族だから愛したんじゃなくて、愛したのが家族だった」が人気だ。昨年BSで放送されるとドラマ好きの話題となり、ギャラクシー賞奨励賞やATP賞奨励賞を受賞。この7月からは地上波で放送されている。

 原作は、作家・岸田奈美による同名エッセイ本である。家族と身の回りのことを書きつづった内容が、そのままドラマの素になってしまうとは、この書き手はいったい何者か?

 本人の言葉で解き明かしてもらおう。(全2回の2回目/前編を読む)

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岸田奈美さん

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岸田家の味方をとにかく増やしたい

 自身のエッセイがテレビドラマ「家族だから愛したんじゃなくて、愛したのが家族だった」になったことは、作家としての岸田奈美さんに刺激や変化、影響を与えただろうか。

「ストーリーを紡ぐことへの意識は高まりましたね。私はふだん自分が書いたエッセイをまったく読み返さないんですけど、ドラマは何度も観る機会があって、なるほどこうやって一本筋の通ったストーリーにするのかとすごく勉強になりました。自分だったらどう表現するかなと考えてみても、実際のドラマよりいいアイデアなんて思い浮かびもしなかったです。

 刺激を受けて影響されて、いまオーディオドラマの脚本や短編小説に取り組んだりしています」

 そうした新しい試みも含め、岸田奈美さんは今日も猛烈な勢いで書き続けている。「主戦場」はブログサービスのnote だ。自身のアカウント内に開設している「キナリマガジン」で、日々長文を公開する。

「キナリマガジン」には膨大な分量のアーカイブがすでにあり、著書もこの5年で5冊を数える。その様子を見ていると、素朴な疑問が湧いてくる。なぜそれほどたくさん書くのか、と。その原動力はいったいどこに?

原動力は「書く」ことではなく、「伝える」こと。その理由は……

「きっと出力回路が壊れているんでしょう(笑)。最近母から聞いてなるほどと思ったことがあったんですけど、私は3歳くらいのころから口癖が『なみちゃんはね、なみちゃんはね』だったそうなんです。しゃべりたいことなんてないときでも、ひたすら大人の気を惹こうとしてそう繰り返していたと。

 自分の話を聞いてもらいたい、自分のことを伝えたいという欲求が、生まれついて強かったみたいです。いまも私の原動力は『書く』ことじゃなくて、ただ『伝える』こと、『わかってもらう』ことにあります。その手段として書きまくっているだけです。自分のことがだれかに伝わり届くのであれば、私はいくらでも自分のことを晒すし、恥だってかきますよ。