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ネット上も「ちゃんと距離が保たれている」

「インターネット上で発表していると読者との距離が近過ぎて疲れそうと思われがちですけど、意外にそんなことはなくて、ちゃんと距離が保たれているものです。

 私の場合どちらかというと、実生活のほうがダメージやストレスは多い。けっこう人の好き嫌いがあって、だれにでも優しくできたりはしないんです。基本ひとりでいるのが好きで、長くいっしょにいられるのは家族のみ。飲み会等は苦手で、せいぜい2時間いるのが限界。お酒の席が嫌いなわけじゃないですが、何をしゃべったらいいかわからなくなってきて、電池切れを起こしてしまう。

 つまり私がいちばん優しくできるのは、ネットの向こうにいる人に対してなんです。思うに人ってそれぞれ、相手に優しくできる距離感が決まっているじゃないですか。この人とは2泊くらいなら一緒に旅行できるけど、1週間いたらたぶんしんどくなってしまうな、ってことはある。ということはその相手に対しては『2日間まで』というのが、優しくできる距離感です。

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 ドラマにも出てくるウチの祖母が認知症になったとき、本当のことを言うと私は家に帰りたくない気持ちのほうが強かった。いつも家の中で暴れているし、そのせいでずっとだれかとだれかの気持ちがぶつかっている状態だったので。

 

 しばらくのち、おばあちゃんはグループホームに入って、弟もホームに入居して、さらには私と母も別々にひとり暮らしするかたちとなりました。週末だけ集まってご飯をつくり食べる生活パターンにしたのですが、それくらいの距離感だと私もみんなに優しくできた。『まあ1週間に1回のことやしな』と、何でも笑って済ませられるようになった。そのときの岸田家にとっては、週イチ集合という戦略的距離感が、お互いを思いやれて自分のことも好きでいられる適度なものだったということです。

 私としてはインターネットを通した顔も見えない相手とのほうが、いい距離感を見出しやすくなっているところはあります」

「読者のみなさんのどんな反応だって私にはおもしろい」

 読者は岸田さんにとってどんな存在だろうか。

「伝えたい欲求ばかりが肥大している私です。私が伝えたいことを受け止めてくれる相手には感謝以外ありません。

 ただ読者のみなさんも、私の書いたものをうまいこと利用してくれているのかなと思うことはあります。noteやSNSの反応を見てみると、私のエッセイを読んだあと、みなさん感想だけじゃなくて自分の話をしまくっています。私の文章を話のマクラのようにして、『いやそれでいえばウチも家族が車椅子で~』とか、『ウチも夫が不倫しやがって~』とか、こちらからするとイヤ知らんよという話を延々と書き込んでくれている。