「戦没者を助けて下さい! 防衛省は日本兵の遺骨を海に捨てようとしています」

 8月15日、終戦の日。台風が接近しているとは思えない真夏の日差しが照り付ける中、東京・九段の靖國神社は今年も“英霊”を弔おうと大勢の人が訪れていた。その手前の路上で配られたチラシの冒頭には、参拝者の目を引くこの言葉が掲げられていた。チラシを配る人たちとともに、マイクを持った男性が訴えた。

マイクを持って訴える男性

「沖縄戦の激戦地である南部から土砂を取るということは、戦没者の遺骨を海に捨てるということに他ならないんです」

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 米軍普天間基地の移設のため、名護市辺野古の沖合を埋め立てて新基地を建設する工事を防衛省が進めている。その土砂はどこから運んでくるのか? 

3000人近い遺骨が収集されずに眠っている

 沖縄本島南部で採取された土砂を使うことが検討されている。だが、そこは大戦末期の激戦地だ。沖縄戦では住民と日本軍と米軍の合計およそ20万人が犠牲になり、今も南部を中心に3000人近い遺骨が収集されずに眠っていると見られる。そこで土砂を採取するということは、戦没者の遺骨混じりの土を埋め立てに使う、つまり海に捨てることを意味する。それでは永遠に遺骨は収集できなくなってしまう。

 靖國神社前で訴えていたのは、具志堅隆松さん(70)。自らを「ガマフヤー」と呼ぶ。ガマは沖縄の言葉で洞窟、フヤーは掘る人。沖縄戦では、米軍の圧倒的な砲火を逃れようとガマに逃げ込んだ住民や兵士が大勢犠牲になった。

靖國神社前で訴える具志堅隆松さん(70)

 具志堅さんは若い頃、ボーイスカウトのリーダーとして遺骨収集に携わり、以来40年以上、ガマにもぐり遺骨をコツコツと掘り続けてきた。

「これは基地に反対とか賛成とか、そういう問題じゃないんです。人道上の問題ですよ。戦没者の遺骨を海に捨てていいと思う人なんていませんよね。本来、政府が率先して遺骨を収集すべきです。なのになぜ沖縄では遺骨が混じっていることを知りながら海に捨てるんですか。そこがおかしいと訴えているんです」

ーーそれを終戦の日に靖國神社の前で訴えるのはなぜか?