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裁判所は、判断を国会に委ねてしまっている

松坂 夫婦別姓の裁判は、最高裁で二度判決が出ているのですがいずれも合憲という判断でした。この問題に関して裁判所は判断を国会に委ねてしまっている印象があるんです。国の立法機関である国会で決めてください、と。裁判所はいつも腰が引けていると批判する人がいるように、日本の裁判所の性質として国会が法律として定めていることに関しては深くまで踏み入らないものなんですよ。

中村 そこへ行くと今回の判決は、かなり思い切っているなと。 

松坂 札幌高裁が明確に違憲と述べた判決には驚きましたね。もともと日本は少数派の性的指向の人を尊重することに対してはものすごく消極的でしたよね。男女平等さえ快く思っていない人も少なくありませんから。

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花巻東の佐々木監督が「丸刈りなんてやっている場合ではない」と感じた出来事

中村 花巻東の佐々木監督はアメリカの学校に研修にいった際、アメリカのトイレは性同一性障害の人にも対応してるんだと驚いて、日本の高校野球はもっとスピード感を持って変わらなければならないと痛感したと話していました。早く変わらなければ、他のスポーツに置いて行かれる、と。丸刈りなんてやっている場合ではないと思ったそうです。

写真はイメージ ©Wakko/イメージマート

松坂 そういう感性があるから野球部も強くなるんでしょうし、大谷のような選手が出てくるのだと思います。トランスジェンダー用のトイレを目の当たりにして、そこまで深く受け止められる人って、実際はそんなにいないと思います。人権感覚というのは、感受性の豊かさが問われるんですよね。

 最近、トランスジェンダーの公務員が職場のトイレ使用状況が制限されているのは不当だとして裁判を起こしたんです。それに対して最高裁は違法であると判断しました。これもLGBTQ問題においては歴史的な判決の1つだったんです。ですが、年配の日本人男性は「勝手なこと言いやがって」みたいな反応をしがちなんです。

中村 一部、強烈なアレルギー反応を示す人たちがいますよね。

松坂 あれは何なんでしょうね。おそらくわれわれの世代から上の日本人男性って、男性であるということだけでこれまでいろいろな恩恵を受けてきたと思うんです。だから、その中の一部の男性は女性の権利を認めようとしないし、ましてやトランスジェンダーの人たちまでもが平等を訴えることに、ものすごい拒否反応を示すのかもしれませんね。