監視、束縛しようとする夫に疲弊
こんな毎日が続き、A子さんは精神的に疲弊していきました。
許されるのは家にいて家事をすることだけで、買い物帰りに娘とちょっとファミレスに寄ること、ママ友と会って立ち話をすることすら、夫に知られると猛烈に怒られるのです。夫は「俺はスマホに詳しいから、お前のスマホの中身は全部見られる。浮気しようとしても無駄だからな」と言うので、インターネットで何かを検索することも怖くなりました。
復職の件から1年ほどが過ぎた頃、A子さんは毎日動悸がするようになったため、夫と離れようと娘を連れて実家に帰りました。夫が「スマホの中身は全部、外から見ることができる」と言っていたので、スマホの電源は切ったまま実家に行き、母親に相談の予約の電話をしてもらい、私の法律事務所に相談にいらっしゃいました。
「お前のスマホの中身は全部見ることができる」
事務所に現れたA子さんはひどくやつれていて、これまでの経緯を話して、「私は働きたいと言っただけなのに、なぜ夫はこんなに怒るんでしょう」と、泣き出してしまいました。
夫が追ってくるかもしれないのが怖い、スマホも電源を入れたら何かされそうで怖い、離れてもいつも見張られているような気がすると言うのです。
A子さんに安心してもらうために、私からは、こういう夫は少なくないこと、「俺はスマホに詳しい」と言う人は決まってスマホにあまり詳しくなく、本当にスマホの中身を遠隔操作で全部見ることができるなら、そのことをわざわざ宣言したりはしないというお話をしました。
何より、A子さんの夫が毎日スマホをチェックしていたのがその証拠です。外から全部中身が見られるのであれば、わざわざチェックをする必要はありません。また、本当に配偶者のスマホを全部見ている人は、ばれないように黙って見ています。
そう聞いて、A子さんはかなり安心したようでした。とはいえ、何があるかわからないので、新しいスマホを契約して、その電話で今後のやりとりを行うことにしました。