近年、芸能人やスポーツ選手などがSNS上で心無い言葉に胸を痛め、自らの命を絶つケースもあるなど、社会問題化している「ネット上の匿名での誹謗中傷」。

 2022年6月には法改正で侮辱罪に新たに「懲役」「禁錮」「罰金」刑が加えられたが、それでもネット上で誹謗中傷をやめない、やめられない人が存在する。匿名で悪口を書き続け、開示請求されるのは一体どのような人物なのか。実際に自身の誹謗中傷に対して、開示請求を行った弁護士に話を聞いた。(取材・文/清談社)

※写真はイメージ ©NOBU/イメージマート

 3年ほど前に悪質な誹謗中傷の被害にあい、情報開示請求をしたという中川充さん(仮名・45歳)。開示請求にいたった経緯を中川さんが説明する。

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「私は弁護士の仕事と並行してSNSの発信にも力を入れており、YouTubeやXを積極的に更新しています。仕事柄、メディアに出演することや、著名人との交際もあり、そういった日々の出来事を淡々とSNSに綴っていただけなのですが、いつからか『アンチ』と呼ばれる人たちに執拗に絡まれるようになりました」

 弁護士であると同時にインフルエンサーでもあった中川さん。そのキラキラした生活や活躍が妬みを買ったのか、SNS上で特定の人物に誹謗中傷行為をおこなう「アンチ」は、中川さんのSNSが更新されるたびに、悪意のあるコメントを残すようになった。

「無差別犯行通り魔弁護士」など意味不明な書き込みが…

 中川さんが言葉を続ける。

「突然、名前も顔も見えない、どこの誰かもわからない相手から、見た目のことを揶揄されたり、『無差別犯行通り魔弁護士』など意味不明な書き込みをされるようになって驚きました。なかには『頭おかしい弁護士はころしちゃった方がいい』など脅迫のような中傷もありました。反論しても火に油を注ぐだけで、自分の些細な言動がアンチの中では10倍に拡大解釈され、まるで事実かのように展開されていく。戸惑いましたね」

 こうしたアンチによる悪質な書き込みは日に日に増え、中川さんの個人情報もアンチによって書き込まれるようになった。アンチからの連日にわたる誹謗中傷に耐えかねた中川さんは、自身の誹謗中傷に対して開示請求を行い、身元を突き止めることにした。