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 堂場 登場人物ひとりひとり演じ分けるのは大変だったでしょう。

 谷山 今回はナレーターとしてすべてを任せてもらったので、まずストーリーテラーとして演じて。そして僕は声優ですから、セリフの部分は体温の通ったキャラクター分けみたいなことを比較的色濃くやりました。

 でも、そこまでやらなくてもいい朗読というのもあるのかもしれないとも考えましたね。つまり、ここはセリフですよ、ということがわかればいいだけで、男女を演じ分けたりしなくてもいいのでは、と。でも僕は今回このような表現方法になったという次第です。

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 堂場 僕の中で二階堂のキャラクターが定まらないまま、谷山さんにぶん投げちゃったという、誠に申し訳ない状況だったんですけど、結果的にはすごくいいイメージを作り上げていただいたなと。声の高さとか、まさにこういう感じなんだって僕は途中で聞いて確信しましたので、安心してこの人が二階堂ですというのを楽しんでいただけるんじゃないでしょうか。

 

 谷山 声優冥利につきます。ありがとうございます。

 物語が全部二階堂という男の一人称で書かれているので、二階堂が話を引っ張っていく形です。二階堂の心象はもちろん、他のキャラクターも二階堂の目を通して描かれているので、朗読していると、二階堂の中に自分がいるような感覚――僕は“二階堂のぬるま湯”と呼んでますが――に浸かっていたような感じがしました。でもそれは初めて体験する面白さでした。

 セリフを、各キャラクターそれなりに味付けを変えて演じてみました、というのが今回の聴きどころのひとつで、聴いてみていただけたら面白がっていただけると思うし、あとさっき言った“二階堂のぬるま湯”の没入感というか、二階堂以外のキャラクターのセリフをのぞく、物語すべてが二階堂という何か不思議な感覚が、このオーディオブックのもうひとつの聴きどころかと思います。

 

 堂場 要するに人称によって朗読した時の感じが変わる、と。一人称は、まさにずっとその人と一緒にいる感覚ですから、核心をついていると思います。

 谷山 友香だったり、二階堂の上司である乾美佳子だったりと、他のキャラクターのセリフによって物語を見る視点が切り替わることを朗読して体感しました。これは一人ですべて朗読したからこそだと思います。本当に貴重な体験でした。

 堂場 これからは朗読が小説の世界を別の次元に広げてくれるかもしれないなと注目しているんです。紙の本や電子書籍とはちょっと違う、谷山さんが話してくれたような新しい感覚が得られる点で。きっと新しい読書体験になると思います。

 谷山 みなさんにぜひ聴いていただきたいです!

闇をわたる: 警視庁特別対策捜査官

堂場 瞬一 ,谷山 紀章 ,Audible Originals

Audible Originals

2024年9月13日 発売

堂場瞬一(どうば・しゅんいち)1963年生まれ。茨城県出身。青山学院大学国際政治経済学部卒業。2000年に『8年』で第13回小説すばる新人賞を受賞。主な著書に「刑事・鳴沢了」シリーズ、「警視庁失踪課・高城賢吾」シリーズ、「アナザーフェイス」シリーズ、「警視庁犯罪被害者支援課」シリーズ、「刑事の挑戦・一之瀬拓真」シリーズ、「警視庁追跡捜査係」シリーズなどのほか、近著に『風の値段』(小学館)、『野心 ボーダーズ3』(集英社文庫)、『ザ・ミッション』(実業之日本社)、『ラットトラップ』(講談社文庫)、『デモクラシー』(集英社)、『鷹の惑い』(講談社)、『ロング・ロード 探偵・須賀大河』(早川書房)、『守護者の傷』(KADOKAWA)などがある。

 

谷山紀章(たにやま・きしょう)山口県宇部市出身。専門学校を経て賢プロダクションへ所属。代表作は「うたの☆プリンスさまっ♪」シリーズ(四ノ宮那月)、「進撃の巨人」シリーズ(ジャン・キルシュタイン)、「文豪ストレイドッグス」シリーズ(中原中也)など多数。2005年に音楽ユニットGRANRODEOを結成。毎年全国ツアーを実施している。7月にはソロアルバム「深夜零時」をリリース、初のソロライブツアー「KISHOW LIVE TOUR 2024 『MIDNIGHT CIRCUS』」でファンを熱狂させた。趣味は読書とサイクリング、バスケ・野球観戦、お酒と多岐にわたる。