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 この歌の主人公は、若き日の叶わぬ恋を懐かしんでいる。でも、聴き終わってみると、若き日、というより、今現在の自分にピントが合うのである。見た目よりも[打たれ強い僕]。そこに気づいて、胸に灯りが点る。

「TSUNAMI」で吹っ切れた。様々なことが整理され、この曲に行きついた

 イントロなしで、いきなり歌が始まるのも特徴だ。サーファーのシンプルな生活様式に倣ならい、そうしたという説もあったが、もともと桑田は、この時、イントロのない曲を意識的に作ろうとした。90年代からの試行錯誤もあり、行き着いた境地ともいえる。

 90年代はテクノロジーの進化により、音楽制作における選択肢が、格段に増えた。「俺にはなんでも出来るんだ、と、調子に乗ってたら、贅肉が増える結果になった」。ひとつの例が、曲のイントロ。シンプルなものでも用は足りるのに、凝りに凝って、ワン・ツー・スリーと、三段階もある大げさなものを何曲も作った。そういう意味では、「TSUNAMI」で吹っ切れた。さまざまなことが整理され、イントロを必要としない、この曲に行き着いた。

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 いざ世の中に問うてみたら、浸透力は絶大だった。時代の気分を確実に捉え、ヒット曲の枠を超え、「TSUNAMI」は社会現象にもなっていく。サザンオールスターズの、新たな代表曲となる。

地元・茅ケ崎の海水浴場「サザンビーチちがさき」©︎時事通信社
いわゆる「サザン」について

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小貫 信昭

文藝春秋

2024年8月21日 発売