ソニーの意外な“方向転換”

 救いがあるとすれば、ソニーのゲーム戦略が、PS5に依存しないマルチプラットフォームにシフトしていることです。

 今年、ソニーが初めてPS5とPC向けに同時発売した『ヘルダイバー2』が1200万本の大ヒット。今年の年末商戦には、PS5とPC、ニンテンドースイッチ向けに『レゴ ホライゾン アドベンチャー』を発売する予定です。同作はソニーが開発する人気タイトル「ホライゾン」シリーズの新作。これまでのソニーであればPS5のみで販売していたでしょうが、そんな貴重な作品を任天堂のゲーム機にも出す……という判断をし始めているわけです。

ゲーム機の高額化は避けられない運命……?

 そして、インフレは世界的な傾向であり、日本のゲーマーは、グラフィックの美しい高性能のゲーム機で遊ぶためには、今後は経済的な負担を強いられるだろうという現状です。今後発売されるであろう家庭用ゲーム機も、高額化は避けられず、日本のゲーマーの“受難”が鮮明になってきているといっても過言ではありません。

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©AFLO

 発売時期も内容もいまだに伏せられている、ニンテンドースイッチの後継機種も、円安の問題が立ちはだかります。仮に日本の価格を3万円に設定して、1ドル150円というレートで試算をしてみると、米国では200ドルで販売することになってしまいます。

 逆にドルを基準にしてみましょう。300ドルなら4万5000円、400ドルなら6万円。仮に、任天堂のゲーム機が6万円と聞いて、どういうイメージを抱くでしょうか? 任天堂のターゲットは、老若男女を問わない全方位タイプですから、価格はなるべく抑えたいところ。1ドル150円という相場は、相当な悩みどころになるのです。

 現在のニンテンドースイッチの有機ELモデルは、米国での販売価格が約350ドル(349.99ドル、税抜き)。対して、日本の価格は3万7980円と、現在のレートを考えると、任天堂が日本市場にかなり配慮をしているのが分かります。この配慮を「当然」と思うのか……という話で、海外のゲーマーからすると「日本の価格に合わせて、値下げしてくれ」と不満に思うのではないでしょうか。

 いずれにせよ、日本のゲーマーには、厳しい現実が立ちはだかっている。そんなことをPS5の値上げは教えてくれているのかもしれません。