カン監督 日本の『スラムダンク』や『すずめの戸締まり』といったアニメ作品が韓国でも大成功をおさめていて、以前では考えられなかった動員数になっています(『スラムダンク』が487万人、『すずめの戸締まり』は557万人)。この動きを分析すると、韓国と日本で同じ「映画観客の変化」が起きていることに気が付いたんです。
「韓国でもアニメが人気になっているのは、リアルな世界への関心が…」
――何が起きているんでしょう?
カン監督 日本の皆さんがどうしてこんなにアニメ作品に熱狂するんだろうと考えたことがあるんです。
おそらくですが、現実のリアルな世界への関心が薄れているんじゃないかという気がしたんですね。政治とか自分の人生に希望や刺激を見出せず、リアルではないアニメーションに興味を持つようになっているのではないか、と。
アニメーションのファンタジーの世界に、現実では得られない癒しや希望を見出して、依存するようになっているんじゃないかと思うんです。
――日本で先に起きたことが、いま韓国でも起きている。
カン監督 そうですね。韓国でもアニメが人気になっているのは、リアルな世界への関心が薄れている現れだと思います。
――日本や韓国でアニメに癒しや希望を求める人が増える傾向を、監督はどんな風に受け止めているのでしょう?
カン監督 私は、文化や芸術で一番大切なことは多様性だと思っているんですね。映画にはアニメも実写も必要だし、ファンタジーも政治物も必要。さらには、それを観て下さる観客の皆さんの関心や感想も多様な方がいいですよね。人間は流行に流されやすい生き物ですが、流され過ぎるのは危険だと思っています。
――アニメだけに人気が偏るのは危険ということでしょうか。
カン監督 もちろんアニメが果たしている役割はたくさんあり、大事な存在です。でも、アニメ映画しか見ない人が増えすぎる状況はやっぱり健全ではないと思うんですね。実写もアニメも両方観るほうがいい。そのためにも、映画を作る人はもっと頑張らないといけないんですよね。