相続登記をするには、手間もお金もかかります。そのために相続登記をしないケースが多発し、相続未登記問題が深刻化したのです。
実際に、私自身、相続や不動産登記をお手伝いするとき、相続登記されていないがために手間取ることが少なくありません。
たとえば、次のようなケースがありました。家屋敷に代々の長男が住んでいて、あるとき、土地の一部を買いたいという人が現れました。「いらない土地なので売ろう」となったのですが、登記簿を調査したら、名義が何代も前のもの。本人は「えっ⁉」と驚いていましたが、これではすぐには売れません。相続登記をしなければならないからです。
登記と違う人が住んでいても問題ない
「なぜ、登記している人と住んでいる人が違っていても、問題にならないの?」と疑問に思うかもしれませんね。それが、何の問題もなく住むことはできるのです。
土地情報には、不動産登記簿謄本のほかに、固定資産課税台帳、農地台帳などがあり、目的別でいろいろな公的データベースが作成されています。
たとえ住んでいる人と登記している人が別人でも、固定資産税を納めていれば、自治体としては何も問題はないのです。
本家の家屋敷に長男一家が住んでいる場合、長男には法定相続分による持分権があると考えられます。わずかでも持ち分があれば居住する権利は認められますし、長男が住んでいることに対しては兄弟姉妹もほかの親戚もまったく違和感を持たないでしょう。
「司法書士がアドバイスした可能性」も
今回の伊集院家のケースでは、建物の相続登記が漏れていたわけですが、なかには土地は相続登記されていても、建物は漏れているというケースがあります。
ちょっと不自然だと思うでしょうが、こうした場合、司法書士がアドバイスした可能性があります。
司法書士が「建物は取り壊したときに滅失登記すればいいから、わざわざ建物は登記しなくてもいい。その分、登録免許税が安くなるから」とアドバイスするケースを聞いたことがありますが、価格の安さでしか自らの価値をアピールできない士業や専門家も、一部には存在します。