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ただし、目先の登録免許税を惜しんだばかりに、あとあと相続のときに大変な思いをするかもしれません。読者のみなさんには、土地も建物も相続登記を怠らないでいただきたいと思います。

相続登記は2024年から義務化

所有者不明土地問題や空き家問題があまりに深刻化していることから、ついに国も対策に乗り出しました。

2021年に相続登記を義務化する法案が可決され、2024年4月1日から施行されたのです。

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通常の法律は、施行されて以降の事象が対象です。ところが、この法律は過去にさかのぼって適用されるという点が珍しく、つまりこれから相続する人はもちろん、過去に相続した人も相続登記をしなければなりません。

どこまで厳格に適用されるかはまだ不透明ですが、罰則規定も設けられています。

将来の相続、あるいは不動産の売買や活用などを考えても、きちんと相続登記をしておくようにしましょう。

「もしかして、共有の山林はありませんか?」

遠山家では父の森夫が亡くなり、残された妻の美紀と長女の由紀、長男の町夫が相続について話し合いました。

由紀と町夫は「お母さんのこれからの生活があるから、全部もらっておきなよ」という意見で一致。こうして森夫の財産は、妻の美紀がすべて相続することになりました。

美紀は、司法書士に自宅の土地と建物の相続登記を依頼しました。遠山家は代々山間部に住んでいます。それを聞いた司法書士はピンと来ました。

「もしかして、共有の山林はありませんか?」
「なんか、あるって言っていた気がするわね……」
「それ、どこかわかりますか?」
「えーと……。あのへんの山かしら」
「たしかにお宅のエリアだと、この辺りの山林の可能性が高いですね。調べてみましょうか?」
「お願いします」

共有者は100人以上

司法書士が調べてみると、やはり森夫は山林を共有名義で所有していました。共有者の数は、実に100人以上です。

森夫の権利部分の名義は、森夫の父のままでした。そこだけ相続登記が漏れていたのです。