司法書士が「山林の持ち分は、おじいさんの名義ですよ」と美紀に伝えると、「ええっ!」と驚いていました。
「これを機に、相続登記をしますか? 今やっておかないと、権利者がどんどん増えて大変になりますよ」
「それじゃ、お願いします」
司法書士は戸籍をたどって権利者たちを特定し、権利を放棄してもらいました。こうして美紀は無事に、山林の持ち分を相続登記することができたのです。
「山林の共同所有」田舎ではよくあること
山林を共同所有しているのは、田舎ではよくあることです。この話と同じく、まるで分譲マンションのように100人以上がひとつの山を共有しているケースも珍しくありません。
かつては山で薪(たきぎ)や山菜、獲物などを取っていて、山は文字通り「宝の山」でした。
「この山のこのエリアは、この集落のみんなのもの」といった入会権のようなものがあったのでしょう。
ところが今は、価値のない山がとても多く、相続したところで農地のようにお荷物になりかねません。
さらにこの事例のように、自宅の土地・建物はきちんと相続登記をしたのに、共有している山の名義の書き換えが漏れているというのが、田舎ではよくあります。
「共有の山があるかどうか」を必ず確認
私は、共有の山林の登記が漏れているケースをそれこそ山ほど見てきました。だから山林の近くに住む方からの相談では、「共有の山をお持ちではないですか?」と必ず確認します。
すると、「そういえば、お父さん、何か山があるとか言っていたかも」「子どものときに山に連れていかれて『この山は俺のもんだ』と自慢していたわ」といった話が出てくるものです。
そこから「共有者名簿はないですか?」「何かヒントになる資料はないですか?」と深掘りすると、何かしら出てくることが意外にあるのです。
明治時代のあいまいな公図に基づいていることがほとんど
また、山林は、都会の住宅地のように境界が明確ではなく、明治時代に描かれたあいまいな公図に基づいていることがほとんどです。