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――「ANISON COVERS 2」では「想い出がいっぱい」「ゆめいっぱい」といったよく知られた曲以外にアニメ「AIR」の主題歌である「鳥の詩」があったのには驚きました。

森口 神曲ですよね。番組で初めて出会った時に、麻枝准さんのノスタルジックな歌詞、折戸伸治さんの目まぐるしく変わる転調の高揚感と素晴らしい曲だなと思って。この企画があったときに「なんとしてでも歌いたい曲です」とスタッフの方々に伝えました。

39年、息づいている大場ディレクターからの教え

――当時のファンは喜ぶと思います。「プラチナ」のカバーも印象的でした。

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森口 大リスペクトしている菅野よう子さんの曲をたくさんカバーさせていただいていますが、特にこの曲はメロディーラインもアレンジも緻密で、圧巻。

 岩里祐穂さんの歌詞との親和性も素晴らしくて、不安が一気に払拭されるような世界で、やる気が出ない時は、これを聴くと潜在能力が引き出されるのが自分でもすごく分かります。

――アルバムを聴くとわかるんですが、森口さんの歌は歌詞が非常に聞き取りやすくて、歌詞一つひとつを丁寧に歌われています。

森口 アニソンはオリジナル曲であっても、アニメという作品があって、その作品から生まれた歌詞があるので、自分だけのものではありません。きちんと背景にあるものを意識しながら伝えたいという気持ちはあります。そこはデビュー曲の「水の星へ愛をこめて」の時の大場龍夫ディレクターからの教えが39年息づいていますね。

©深野未季/文藝春秋

先輩方がアニソンという世界を守ってきてくださった

――「Anison Days」では最新のアニソンもカバーされていますが、アニソンの変化などは感じますか?

森口 楽曲がとにかく複雑で難解になってますね。コードもリズムも音域も。BPMも早いしそういった意味では、歌手はすごい大変だなとは感じます。同時にアニソンは日本が誇る文化に成長しているので、やりやすくもあるんじゃないでしょうか。どこに行っても、それこそ海外に行ってもお客さんは熱く盛り上がりますし、CDショップに行ってもアニソンのフロアができているくらい。そういった意味では精神衛生上良い環境だと思います。

 アニキ(水木一郎さん)や堀江美都子さんはもう苦労に苦労を重ねて、みかん箱の上から拡声器を持って歌ってる時代があったと聞いています。でも堀江さんがおっしゃったんです。「いつも帰りたくなるけど、子供たちのキラキラした目を見てたら帰れない」って。そこを乗り越えてきた先輩方がアニソンという世界を純粋に守ってきてくださったから、その延長線上に私たちも今の新しいアーティストの方々も、歌いやすい環境があるんだと思います。

 だからやっぱり遺伝子を知るっていうのは大事だなと。今流行ってるもの、注目されているアニソンを歌ってる人たち、制作している人たちにも影響された音とか、憧れのアーティストがいるわけじゃないですか。