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――変なこととは?

三ツ矢 僕との関係は解消せず、結婚後も付き合いたいと。でも、それは結婚相手の女性に悪いでしょう? だから僕は「それはできない」と言いました。

 そしたら彼は「じゃあ、結婚相手の女性を選んでくれないか」と。

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――それはビックリしますね。

30歳の頃の三ツ矢さん

三ツ矢 僕は一瞬「何を言ってるんだ?」と、意味がわかりませんでした。でも、それまでの彼は僕に本当に尽くしてくれたので、女性と知り合うチャンスもなかったんですよ。そこで考えてみたら、知り合いに性格的にも合いそうな女性がいたので、彼に紹介してみようかなと。

――それでも紹介はしたんですね。 

三ツ矢 そうなんです。彼とその女性を引き合わせたらすぐに意気投合して、2~3日後に「結婚します」と言われました。僕は「わかった」と答えて、彼との関係を終えたんです。

完全に断ち切らないと、彼は幸せな家庭を築けない

――怒涛の展開です。

三ツ矢 彼の結婚が決まったら、僕は急に、ものすごい喪失感に襲われたんですよ。「明るくて陽気な三ツ矢くん」で、友だちは多いほうなのに、やっぱり10年以上一緒に暮らした人と別れるとなったら、何かが抜け落ちたような気がして……そういう感覚は人生で初めてでした。

 でも、これも慣れなきゃいけないと気持ちを立て直していたら、彼からまた連絡が来て「結婚式の司会をやってほしい」と頼まれたんですよ。そこで僕は、本当にカッチーンときてしまって。

――どういう気持ちで司会すればいいのかわかりませんよね。

三ツ矢 たぶん彼は、僕との関係が完全に切れてしまうことに未練があったと思うんです。でもこうなったら、僕から完全に断ち切らないと、彼は幸せな家庭を築けないと思って。わざと酔っぱらって、電話で「もう二度と連絡するな」とかワーッとまくしたてて、ガチャンと切りました。それ以来、彼とは一度も会ってません。

©橋本篤/文藝春秋

――三ツ矢さんは引きずらなかったんですね。

三ツ矢 もちろん、彼の気持ちにつけこんでズルズル付き合い続けることもできたと思います。一瞬、それも考えたんですよ。でも、結婚後に彼が家庭を背負う姿や、子供ができて父親になった顔を見てしまったら、僕がすごくミジメな気持ちになりそうな気がして。だから、そこでスパッと切っちゃったんですよ。それでよかったと思っています。

――今のような同性婚という選択が、当時もしあれば……と思いますか?

三ツ矢 僕たちが20代の頃に同性婚のシステムがあったら、ひょっとしたら結婚していたかもしれませんね。うん……。でも今はもう、1人が楽ですね。