気鋭のフィルムメイカーによるふたつの作品『ぼくのお日さま』と『SUPER HAPPY FOREVER』は、幸福な瞬間とはどんなものか、優れた映画とはどんなものかを提示する。そしてどちらの作品にも、実に奇妙なことだが、カップラーメンが登場する。一方はさりげなく、もう一方はとても印象深いかたちで。
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観る人を魅了する全編にあふれる光、『ぼくのお日さま』
奥山大史が監督した『ぼくのお日さま』は雪の田舎街が舞台だ。
小学6年生のタクヤは、ホッケーの練習をしていたアイススケート場で、フィギュアスケートに熱心に取り組む少女を見かける。
いや、見惚れた、という表現のほうがしっくりくるかもしれない。
一目で心を奪われ、スケート場の片隅で少女のステップを不器用に真似るタクヤに、少女のコーチは思わず声をかける。そしてフィギュア用の靴を貸し、タクヤの練習に付きあい、提案する。少女とペアでアイスダンスを練習しないかと。
物語はそこから、アイスダンスに打ち込む3人の様子を微笑ましく映しだしていくが、あるできごとをきっかけに3人の幸福な関係は崩壊へと向かう。
観る人を魅了するのは、なによりもまず全編にあふれる光だ。
とくにタクヤが少女を見かける場面で、「月の光」に合わせて優美に滑る少女を、琥珀色の光がやわらかく包みこむときの美しさ。
刻々と変化する光の、その一瞬のきらめきを、監督、脚本、編集に加え、みずから撮影も行う奥山は曇りのないまなざしでカメラに収める。
はじめはぎこちなかったアイスダンスが、徐々に息の合うものになっていく過程を、どこか見守るような光はまばゆい。だからこそ彼らの関係に亀裂が入る終盤、日の陰ったスケート場がよりいっそうわびしく感じられる。
光と同様に、この作品が繊細にすくい取っているのは、人と人とのあいだに生成し、次の瞬間にはすぐ移りゆくようなものだ。