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 たとえばアイスダンスの練習の合間にはしゃぐ3人のあたたかい雰囲気や、もっと何気ない、物語の展開には寄与しないような会話のみずみずしさが、ここでは高い鮮度で記録されている。リンクを滑走する彼らの息遣いのようなものまで、すぐ耳もとにありありと感じとれるとしたら、その一因は監督の奥山自身もスケート靴を履き、リンクを併走しながらカメラを回した異例の撮影スタイルにあるのかもしれない。

 いずれにせよ、人と人とが触れあい、なにかできごとに直面したときに生起する、まがいものではない空気や情感が、この作品を豊かで優れたものにしている。それは映そうと思っても、誰もが映しだせるものではない。

『ぼくのお日さま』公式Xより引用

 そしてちょっとしたブレイクみたいに、練習風景にさりげなく挿入される、スケート場でカップラーメンを食べる姿の愛らしさ――。

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赤い帽子を巡るひとつのストーリー、『SUPER HAPPY FOREVER』

 ――カップラーメンがこんなにも感動的に登場する日本映画を、他に思い浮かべることができない。

 五十嵐耕平が監督した『SUPER HAPPY FOREVER』のことだ。

『SUPER HAPPY FOREVER』公式Xより引用

 “永遠にめちゃくちゃ幸せ”というタイトルを掲げたこの作品は、しかしどちらかといえば寂しさや悲しみのほうが色濃い。

 物語は海辺の行楽地ではじまる。

 幼馴染とともにこの地を訪れた佐野は、街や浜辺で、あるいは宿泊するホテルで、赤い帽子を探しつづけている。

『SUPER HAPPY FOREVER』公式Xより引用

 表情はうつろで、生気をほとんど失った佐野が、なぜ赤い帽子を探しているのか、はじめはまったくわからない。わからないからこそ、彼の喪失感が喪失感そのものとして前面にせり出してくる。

 次第に見えてくるのは、赤い帽子を巡るひとつのストーリーだ。

 帽子は佐野の妻がかぶっていたものである。佐野は妻と5年前にこの地で出会い、やがて結婚した。しかし妻は先ごろ亡くなってしまった。しかもその結婚生活は、決して幸福なものではなかった。

 結局、帽子を捜しだせないままの、どこまでも哀切な前半部を受けて描かれるのが、5年前の同日、この地で起きたあるできごとだ。それは前半とは対照的に、隅々までみずみずしさであふれている。