2024年9月21日に77歳となるスティーヴン・キング。今年はその「恐怖の帝王」の作家デビュー50周年となる。これを記念して、文藝春秋では邦訳連続刊行を続けてきた。その第4弾となるのが日本独自中篇集『コロラド・キッド 他二篇』だ。

 いつもながらの藤田新策氏の美麗な装画とあわせて目を引くのが、帯にある荒木飛呂彦氏のコメント。言うまでもなく、氏の代表作にしてライフワーク、現在第9部が連載されている『ジョジョの奇妙な冒険』は誰もが知る国民的コミックである。

コロラド・キッド 他二篇』(スティーヴン・キング)

 全世界のクリエイターに影響を与えているといっても過言ではないキング。荒木氏もその影響を受けたひとりであることは、本人も認めるところだ。

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「ダ・ヴィンチ」2012年8月号では、荒木氏が最も影響を受けた一作としてキングの『ミザリー』を挙げ、「僕が思うサスペンスの、完璧な形ですね。~勉強のために今でも読み返しています」と語っている。また、荒木氏の著書『荒木飛呂彦の奇妙なホラー映画論』では、第4章がまるまる「キング原作の映画」に割かれているほどだ。

『ジョジョ』に初登場したキングへのオマージュは…

 そんな荒木氏だけに、長く続く『ジョジョ』の随所にキングへのオマージュや影響がうかがえるのは、ファンならば周知のとおり。とてもすべてを指摘することはできないが、いくつか有名な例を紹介してみよう。

『ジョジョの奇妙な冒険』第1部「ファントムブラッド」1巻

 記念すべき第1部で(おそらく)初登場したオマージュは、シリーズの多くを通じて活躍する宿敵、ディオ・ブランドーが飲んでいるウイスキー。悪事がジョジョに露見したのではないかと悩むディオが、「酒! 飲まずにはいられないッ! あのクズのような父親と同じことをしている自分に荒れているッ!」と述懐しながらつかんでいる酒瓶のラベルが(もちろん英語で)「デッド・ゾーン」蒸留所の「クローネンバーグ」となっているのだッ!

 これは直球で、1983年にデヴィッド・クローネンバーグ監督で映画化された『デッド・ゾーン』だろう。ただし、映画が日本公開されたのは1987年6月であり、邦訳の刊行もそれに合わせたと思われる1987年5月だった。