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『ジョジョ』第1部の連載開始が1986年12月で、当該エピソードは第9話と思われるので、おそらく映画版の日本公開直前の頃だったはず。公開を楽しみにする荒木氏のイタズラ心が描きこまれたのだろうか。

 1989年に連載がはじまり、シリーズ中でも屈指の人気を誇る第3部となると、キングをはじめとするホラー作品へのオマージュと思われる描写が本格的に頻出する。

『ジョジョの奇妙な冒険』第3部「スターダストクルセイダース」1巻

 まず、この後のシリーズ全体を決定づけるコンセプトとして登場した「スタンド」能力。この命名のどれくらいがキングからの影響かはなんとも言えないものの、キングの超大作『ザ・スタンド』を連想しないわけにはいかない。邦訳こそ2000年を待たねばならないが、原作自体は1978年に刊行されているので、荒木氏が存在を知っていた可能性はあるだろう。

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 あるいは、「スタンド」の命名を発表(?)するジョセフ・ジョースターのセリフ「そばに現れ立つというところからその像を名づけて……『幽波紋』(スタンド)!」は、『スタンド・バイ・ミー』も思わせる。この映画の日本公開が1987年4月、原作の中編を収録した『スタンド・バイ・ミー 恐怖の四季 秋冬編』も(やはりおそらく映画版公開にあわせてか)1987年3月に刊行されているので、時期的な近さからすると、こちらの影響があったのかもしれない。

 それにしても、『デッド・ゾーン』『スタンド・バイ・ミー』という、まったく毛色の異なる傑作が日本で数ヶ月とおかず映画公開+邦訳刊行されていたとは、今さらながらキング恐るべしである。

空条承太郎の苗字の由来はあの犬…?

『ジョジョ』第3部は他にもキングの影響を思わせるナイスなキャラクター・能力が目白押し。列挙していこう。まず主人公・空条承太郎の「空条」なる珍しい苗字は、(もちろん「ジョジョ」の語呂あってだが)キングの『クージョ』(1983年邦訳刊行)、映画版でいうなら『クジョー』のもじりか、と言われている。

 原作のスペルは“Cujo”。承太郎がエンヤ婆のニセホテルの宿帳に書いた偽名は“Qtaro Kujo”。第6部の主人公で承太郎の娘、空条徐倫が刑務所で持っていたネームプレートは“Cujoh Jolyne”。完全に同じにはなっていないのが思わせぶりすぎる!