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ホワイトハウスのパクリ建築取材で警察を呼ばれる

西谷 向こうもそういう質問のときは、適当に絡んできているだけですもんねえ。そういえば、2013年春に中国の「パクリ建築」の取材をしていたときにも、訳のわからない理由で拘束されました。ホワイトハウスをパクった地方政府の建物の近くで、通行人の男性に「なんであんな形なの?」「これはひょっとしてアメリカ崇拝ですかね?」と質問してみたところ、突如激昂して腕をつかまれ、警察を呼ばれてしまったんです。

安田 え、そんな理由で?

“パクリ建築”ホワイトハウス風の役場の一つ、上海市閔行区の地方裁判所・閔行区人民法院。ちなみに西谷さんが警察を呼ばれて説教されたのはまた別の場所である 撮影:西谷格

西谷 そうなんです。彼が言うには「この日本人は我々の政府を侮辱している」と。警察署に連行されて事情を聞かれ、警察官からは「お前の考えは幼稚だ。自分でもわかるだろう」とみっちり説教されました。釈然としませんでしたが、3時間後にようやく解放されて、ホッとしたのを覚えています。

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安田 いやそれ、冷静に考えたら「どっちが幼稚だよ!?」って思いません?

西谷 ホントですよ!(笑)

キツネ肉を調べたら軟禁された!

西谷 あと2013年ごろに、山東省でキツネ肉の取材をしたときがヤバかったです。ヒツジ肉だと言って、キツネの肉をしゃぶしゃぶか何かで出していた事件があったんですよ。いざ食べてみるとあまり違いがわからないらしくて。

安田 羊頭狗肉ならぬ羊頭狐肉。でも、ヒツジよりもキツネのほうが供給が大変っぽくないですか。

西谷 毛皮を取ったあとの肉を横流ししたとかいう話でした。で、日本のニュースでも話題になったので、ある週刊誌から「調べてきて」と言われまして。そこで噂があった山東省の精肉所に行って「キツネ肉ありますか?」って聞いたら、「ちょっと待ってろ」と言われたんです。

安田 ストレートに質問ぶつけますね……。それで?

西谷 椅子があったので座って待っていた。そうしたら、実は精肉所の人がこっそり通報していて、15分くらいしたら警察がやってきました。で、来た警官に「アンタ何やってるの?」と聞かれたので「旅行です」。「こんな田舎に見るものは何もないよ」「何もないところが逆に落ち着くんです」みたいなやり取りをして。

チャラ男にラブホに連れ込まれる女子大生のような状況に

安田 マニュアルがあるのかと思うほど、ありがちなやりとりですね。

西谷 はい。それで、「ひょっとして取材なの? 記者なの?」「いや違います」「もし記者だったら、役所に来たら他の記者もいていろいろ説明もしている。来ないか?」と。そこで、何か教えてくれるのかなーと思って「じゃあ、お願いします」と公安の車に乗ったところ、「記者証は?」「ないです」「記者証ないならダメだよ」みたいな話になり、彼らが提携しているホテルにぶちこまれました。ホテルで言われるわけです。「ちょっと休んでいきなさい」。

安田 車に乗せられたのは完全にワナだったんですね。サークルの新歓でチャラ男に騙されて、気がつけばラブホに連れ込まれる大学1年生女子みたいな状況になってる。

西谷 そうですよ。で、部屋にはずっと屈強な男2人がいて、やがて「メシの時間だよ」「食べなさい飲みなさい」と言われて、異常な量の酒を飲まされて。ぐでんぐでんになって、眠りかかったところでいきなり尋問がはじまりました。いまから考えると、そういうマニュアルがあったんでしょうね。泥酔状態で尋問するみたいな。

安田 ちょっと笑えなくなってきました。

西谷 で、スマホとパソコンの中身や、着信履歴、メールなんかを全部見られて。日本の出版社となにかつながりがあるのはバレたみたいです。「この、頻繁に連絡を取っているやつは誰だ?」みたいな質問もされましたから。尋問は未明に終わったんですが、その後もずっとホテルの部屋に軟禁。いつ終わるのかわからなくて、緊張状態ですごく疲れましたね。翌日の夕方くらいに、とりあえず山東省から出ていけばそれでいい、みたいな話になって、上海へ戻りました。

安田 パソコンの中身を調べるのに1日かかったということなんでしょうかね。ともかく、無事で済んでよかった。

中国新疆ウイグル自治区ウルムチ市内で警備のため停車する警察車両 ©共同通信社