「AV出演の過去がバレてますます立場が悪くなると思ったのでは」
野崎氏は須藤を見限り、「ミス・ワールド・ジャパン」のファイナリストの一人に入れ上げ始めた。須藤の過去のAV出演歴が発覚したのは、そんな折、同年5月上旬のことだ。野崎氏の会社の元従業員が明かす。
「早貴が出演しているAV作品を、会社の若い社員がネットで見つけたんです。彼女はファッションモデルという触れ込みでしたから、経歴を欺いて社長(野崎氏)と結婚したことになります。AV出演の過去がバレて、ますます立場が悪くなると思ったのではないでしょうか」
事件を振り返る上で、この出来事が持つ意味は、決して小さくない。初公判では、須藤が55歳差の野崎氏と結婚したのち、友人らに「(夫である野崎氏の)自然死で遺産を得る」と話していたことが明かされた。だが、離婚が不可避な状況に追い込まれ、過去のAV出演も発覚した。思い描いていた身勝手な未来図は一変したのだ。
「早貴は『離婚するなら慰謝料をもらって東京に帰る、2億円くらい欲しい』と話していましたが、社長は『あの女には慰謝料30万円も払えば十分やろ』と言っていたので、それぞれの認識には大きな差があったことになります」(同前)
もとより、愛情ではなく金で野崎氏と婚姻関係を結んだ須藤。実は、野崎氏に離婚を切り出された前後から、「完全犯罪」「覚醒剤 死亡」など、のちの事件に繋がるような不穏なワードを何度も検索していたことが明らかになっている(#1)。そして、AV出演歴が発覚して間もない5月24日、野崎氏は急性覚醒剤中毒死でこの世を去るのである。結婚からわずか105日後のことだった。
須藤の弁護人は、初公判の冒頭陳述で、裁判員席に向かってこう語りかけた。
「怪しいからやっているに違いない――、もしそう思って結論が決まってしまうなら、この裁判をやる意味はない。そもそも本当に事件なのか。本当に被告人が人を殺す量の覚醒剤を飲ませることができるのか。検察側がこの法廷で立証できたのか考えて欲しい」
検察側は、長い公判を通して、これが殺人事件であり、犯人が須藤であることを立証していくことになる。