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「人間ってこんなにも力が入らないんだ」と実感したワケ

――意識を取り戻した直後には、何を思ったのでしょう?

菅原 声が出ないし、のどもカラッカラだったので「お水飲みたい!」って(笑)。左右の腕に痛み止めの点滴が刺してあって、血管を左足へ移植するために右足も切っていたので、両足を一時的に動かせなかったです。

 

――手術後は、どれくらいリハビリしたのですか。

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菅原 2週間ほどで、期間は意外と短かったです。最初はベッド上で左右への寝返りができるか、両足をどこまで持ち上げられるかを確認する程度で、1週間後からはベッドの手すりをつたって歩いたり、歩行器を使って歩いたりと、段階をふんでいきました。

 不安はさほどなかったけど「人間ってこんなにも力が入らないんだ」とは実感しました。腫瘍を切除した左足をかばい、血の巡りをよくするために着圧ストッキングを穿いて。

 ただひとつ、入院中の履き物を厚底サンダルにしちゃったのはミスでしたね。よけいに転んでしまって、私が転ぶと作業療法士の方が怒られてしまうらしく、迷惑をかけちゃいました……。

「こんな状態では間違いなく踊れない」

――入院から4ヶ月ほど、2023年1月には無事に退院となりました。

菅原 杖をついてようやく歩ける状態にはなっていました。実家に帰ったんですけど、家族みんな根っからのポジティブで、色々な場所に連れ回されたんです(笑)。メンバーやスタッフさんも「おめでとう」と言ってくれて、早く東京へ戻りたいと思っていました。

 

――ただ、徐々に歩けるようにはなっていたものの「ダンスができなくなるかもしれない」と告げられた不安も残っていたのではないかと。

菅原 ありました。退院の時点ではまだ、手術の影響で左足が1.5倍ほどに腫れ上がっていたし、突っ張って満足に動かず、左足を一歩前に出すだけでもガクッと倒れるほどだったんです。私なら乗り越えられると根拠のない自信もあったんですけど、現実を突きつけられたようで「こんな状態では間違いなく踊れない」と自覚するようになりました。

撮影=杉山秀樹/文藝春秋